2026年6月20日土曜日

2026.06.20 鉛筆のプラケースが筆箱になった時代があった

● 右の写真はリボンの絵柄鉛筆,503番。
 この鉛筆がいつのものかは知らないが,プラケースの右側に何か入っているわけではない。uni や MONO には消しゴムが入っているが,このケースには何もない。
 けれども,わざわざ空きスペースを作っているのは,このケースを筆箱として使えるようにするためだろう。

● Hi-uni や uni のケースを筆箱にするのが流行った,それに憧れた時代があった。Hi-uni や uni の,中身は無理でも,ケースを欲しがる子供は普通にいただろう。
 昭和50年代の前半までは,そうしている人が大人の中にもいたと思う。

● それから幾星霜。鉛筆は安くなり,そうした誘引力を失った。それ以前に鉛筆を使う人が減った。
 プラケースが高級鉛筆の印であった時代も過ぎた。プラスチックの値打ちが下がったどころか,環境汚染の代名詞になった。今は紙ケースの Hi-uni もある。

● 社会のすみっコの変化ではあるけれど,「久しくとゞまりたるためしなし」の一例。

2026年6月19日金曜日

2026.06.19 鉛筆は時空を越えない

● 万年筆やボールペンに比べて,鉛筆はとにかく耐用年数が長い。戦前に生産された鉛筆が普通に使える。
 戦前の鉛筆を使うと,その時代の空気を感じるか。アメリカインドの鉛筆を使うとアメリカの風やインドの灼熱が伝わって来るか。
 そんなことはない。使っている場が令和8年の北関東の田んぼの村にある陋屋なのだ。場の粘着力は強烈だ。

● それを破れるものがあるとすれば想像力だけなのだろうが,場を破るほどの想像力をどうしたら獲得できるのか,ぼくにはそれこそ想像しかねる。
 旅行記や歴史書,文芸作品をどれほど読んだらリアリティに充ちた想像が可能になるのか。

● いつの時代に,どこで生産されようとも,今ここにある鉛筆はあくまで1本の鉛筆という物体であるに過ぎない。その物体からそれが製造された時代や場所の何かを感じられることはない。
 感じられると思ってもいけない。おそらく,それは脳が勝手に作り出したイリュージョンでしかないからだ。この鉛筆は前世紀のもの,この鉛筆はインドで生産されたもの,ということを予め知っているから,それに応じて脳が勝手に作動した結果に過ぎない。

● ヴィンテージという言葉があるが,そのヴィンテージが時代を偲ぶよすがとなるのは,形状が現在のものと違っているからだろう。経年変化も含めて,時代がかっているからだ。
 しかし,そのヴィンテージでその時代の何がわかるか。見る人が見れば何がしかはわかるんだろうけど,ぼくら素人は今とは違った形状を形状として認識して終わる。それだけのことだ。

● それを鉛筆に求めるとすると,軸に印字されている文字の書体や色,塗装の具合いといったところになるだろうが,残念ながら,そこは鉛筆の中で最も劣化しやすい部分で,比較的早く消滅する。
 黒鉛芯は百年経ってもビクともしないかもしれないが,芯を取り囲んでいる部分は劣化する。表面に近いところほど劣化が早い。

● もうひとつ。どこの国の鉛筆も似てきているのではないか。
 吟醸や大吟醸があたりまえになると,日本酒の味や風味はメーカーを越えて一点に収斂する。同じように,鉛筆の芯も各国で良質化が進行すると,どれも似たものになる。そうした方向に向かっているのだと思える。

● というわけなので,鉛筆は時空を越えない。
 鉛筆で書(描)かれたものは,幸運に恵まれれば,時空を越えて存在するが。

2026.06.19 横罫の測量野帳と中華コクヨの測量野帳

● 横罫の測量野帳がかつてあった。60周年限定商品の「NOTE BOOK」ではなく,最近出た Campus の「ポケットノート」でもない。
 判型も厚手の表紙も製本の仕方も測量野帳そのものだが(中紙は48枚だった),型番はノ-432。

● 測量野帳と同じラインで生産はしていても,“セ” で始まるんじゃないからね,“ノ” だからね,測量野帳とは別系統だからね,というやつね。
 もちろん,とうの昔に廃番になっているわけだが,5年前に2冊350円でメルカリに出たことがあって,もちろん買って使った。
 普通に文字列を書き連ねるには横罫がいい。ぼくはそれしかしないので,流行りかに見える方眼は罫線過剰というか,横書きするには縦線がジャマなんだな。

● 今度はノ-421がメルカリに出てきた。4冊で800円。もちろん,ポチって入手。
 ノ-432よりスタイリッシュ。中紙は野帳と同じ40枚。

● ぼくは立って書くということがまずない。歩いているときに,ふと思いついたことを立ち止まって書くなんて,カッコいいこともしたことがない。これからもしないと思う。
 が,デスクやテーブルで書くんでも,表紙が厚いノートは使いやすい。

● 中華コクヨ(国誉商业(上海)有限公司)の測量野帳。判型,製本方法,中紙の枚数とも,日本コクヨと同じ。
 唯一,方眼が4㎜なのが違う。なにゆえに4㎜にしたのか。中華と日本の筆記スタイルや嗜好の違いがあるなら知りたいものだ。
 中国では “頁” の意味が日本とは違うようだ。1頁は1枚の意味なんだな。

2026年6月18日木曜日

2026.06.18 台湾の鉛筆

● MADE IN TAIWAN の鉛筆を買った。LUX 3001。メーカーは「雄獅(Lion)」。現在は廃番になってるらしいのだが,詳細はわからない。
 レイメイ藤井(と思うのだが)が販売元になっているゴム付き鉛筆も台湾製だったと思う。こちらはちょっと使っている。普通の鉛筆で,特に見るべきところはない。普通にいい鉛筆という感じね,という印象だった。

● LUX 3001 はどうか。使ってみた。鉛筆から伝わってくるフィードバックはレイメイ藤井とほぼ同じ。レイメイ藤井の方が少し濃いかもしれない。レイメイ藤井にに高級感があるように感じたが,錯覚の可能性がある。
 大雑把な言い方をすると,三菱9800の現行品を使っている感じ。9800よりやや硬め,薄め。ホントに “やや” だが。

● で,濃いめ,軟らかめ好きなぼくとしては,9800を採る。が,この台湾製も何の問題もない。
 LUXには “FOR OFFICE & SCHOOL USE” とあるが,その用途にピッタリだ。硬め,薄めが好きな人にはちょうどよろしかろう。

● もうひとつ,MADE IN TAIWAN がある。F1レーサーの絵柄の鉛筆だ。硬度はHB。それ以上のことはわからない。メーカー名も販売元の記載もない。値段も書かれていない。
 レースの観覧チケットを買った人へのお土産ということはないだろうけれども,タダで配られたんだろうか。

● LUX 3001 とほとんど同じ。まさに日本基準のHBだなと思った。軸は LUX 3001 やレイメイ藤井より太めだが,日本の鉛筆の太さのバラエティーの範囲に収まる。
 台湾の鉛筆製造に関しては最初から日本メーカーが関わっているのであろうから,芯の濃さや外見が日本の鉛筆に似ているのは不思議ではないだろう。

● というわけで,アメリカンに比べると,使っていてそんなに楽しい気分にならなかった。日本製との乖離がないのだ。驚きがない。
 台湾でも uni や MONO に相当する高級鉛筆があるに決まっている。それらを使ってみたいという気分には,しかし,ならなかった。
 ちなみに,上記の3つの中で最も使ってみたい鉛筆はレイメイ藤井のもの。“普通にいい鉛筆” ではあるのだが,少しこだわってみたいなという気にさせる。

● 日本同様に中高生で鉛筆を使う人は減っているらしい。シャープペンが天下を制しているのは世界共通だろう。
 という中で鉛筆を使っているのは,日本であれ台湾であれ,変わり者の範疇に入る。そんなところで変わり者であっても仕方がないのだが,このまま変わり者を全うしようと思う。

● 日本橋の「誠品生活」を思いだした。ほんの少しとはいえ台湾鉛筆を使ったのだから,台湾文具に関してゼロ地点は脱したということにしたい。
 ゼロじゃなくなったところで「誠品生活」に行ってみれば,何かの発見があるかもしれない。とは言うものの,「誠品生活」で鉛筆なんか扱っていたっけ?

2026年6月17日水曜日

2026.06.17 欧州の鉛筆

● KOH-I-NOOR HARDTMUTH SCHULSTIFT AUSTRIA。SCHULSTIFT は School Pencil,学童用という意味であるらしい。
 この明るい緑色は KOH-I-NOOR の基本色なんですか。芯ホルダーにも同じ色のがあったな。

● ダース箱にはメーカーの住所(ウィーン)とテレックス番号が記載されている。
 Gemini 先生によると​,KOH-I-NOOR はチェコのブランドとして知られているが,発祥はウィーン。その後,製造拠点をチェコ(当時は同じハプスブルク帝国)に移転したが,第二次世界大戦によってチェコとオーストリアに分割されることになった。ぼくの手元にあるのはオーストリアで製造されたもの。

● これも Gemini 先生に教えてもらったのだが(キャロライン・ウィーヴァー『ザ・ペンシル・パーフェクト』にもあったような気がする),​KOH-I-NOOR は「黄色い鉛筆」の元祖であるらしい。
​1889年のパリ万国博覧会で,彼らは「コヒノール」という最高級の鉛筆を発表しました。当時,鉛筆は木肌がそのままのものが多かったのですが,彼らは最高品質のシダー材を使い,見事な「黄色」で塗装して売り出しました。これが大ヒットし,「良い鉛筆=黄色」というイメージが世界中に定着しました。アメリカの黄色い鉛筆が多いのもこれがルーツです。
● KOH-I-NOOR はジャンボのHBを持ってるんですけどね(こちらはチェコ製),彼の地のHBは硬くてぼくの手に負えない。これは国産鉛筆のBくらい。スムーズだ。
 軸の太さはドイツ製と同じ。六角なのだが,角は丸まっている。塗装が厚いのか。

● LINEX WP 100(デンマーク)とCOSTS(イギリス)。どちらもHB。
 彼の国のHBはドイツと同じなんだろう,であれば手なずけるのが厄介だ,てか,手なずける気にならない,だったら買うなよな,と自分にツッコんでたんだけれども,書いてみたら日本のHBと同じ。LINEX は三菱より北星のHBに近い。

● COSTS の軸の太さはドイツと同じなのだが,LINEX は日本と同じで,バレットキャップに合わない。入らないことはないが,入れない方がいい。
 LINEX WP 100 はデンマークでも高級な鉛筆なんだろう。相当にいいですわ。

2026.06.17 インドの鉛筆

● apsara pop。インドの Hindustan Pencils 社が展開する製品であるらしい。
 大昔(「リンガーハット」がなかった頃),チャンポンを食べるためだけに寝台特急「さくら」に乗って長崎に行ったことはあるが,鉛筆を買うためだけにインドに行くという酔狂はさすがに致しかねる。もう若くないしね。

● メルカリで買いましたよ。ポップな仕上がり。硬度(濃度と言った方がいいでしょうね)は extra dark。国産鉛筆だとBくらいか。頭は丸まっている。軸はヒマラヤ杉を使っているのだろうか。
 インド文具は日本に比べるとよろしくないので,赴任する場合は日本製を持ちこむべしという声がネットにあるが,この鉛筆は国産普及品に引けを取ることはない。塗装も丁寧だ。

● つーか,引けを取らないというレベルではない。これがインドの標準だとすると,インド恐るべし。ネットにあった情報はなんだったのだ?
 昭和30年代の日本製鉛筆なんか,インドでも通用しない。あたりまえか。
 若者向けの意匠なのだが,これを普通にインドの若者が使っているわけではないのだろうね。高級鉛筆に属するのだろう。

● と書いて 𝕏 に投稿したら,こんなリプが届いてね。𝕏 の鬱陶しいところだな,愚にもつかないリプを読まされること。
工業化は世界を均質にするものデス
ひげ剃りのカミソリなどを見ても、インド製は先進国と比べても遜色ないデス
日本製と比べて最初の切れ味では劣るものの、耐久性能(いつまで剃れるか)については日本製品より遥かに上デス
つまり…そういうことデス
● こういうリプにどう対応すればいい? スルーでいいかね。それとも,丁寧に対応してやるべきかね。
 工業化は世界を均質にする? 大丈夫ですか? 生兵法は大怪我のもとですよ。通俗的な理解に留まっていないで,もう少し勉強した方がいいと思いますよ。
 カミソリについての評価も的外れ。それは供給側の(日本市場を睨んだうえでの)選択の結果であって,優劣を測るモノサシにはならんです。市場が切れ味より耐久性を求めていると考えれば,すぐさまそれに対応した製品を出しますよ。
● けど,そこまで親切にしてやっても通じないだろう。「そういう小学生レベルのことを言われても」と返して,お引き取り願った。
 できればフォローを外してもらうか,ブロックしてもらえるとありがたい。

● いや,インドの鉛筆の話だった。apsara pop,かなりいい鉛筆なのだった。これなら,日本の鉛筆に慣れた人からインド鉛筆ファンが出ても全然おかしくない。
 逆に言うと,この鉛筆にインドらしさを見出すのは難しい。日本製と何が違うのか。
 その「インドらしさ」というのが,こちらがわずかな風聞から勝手に形作ったものだ。そもそも存在しないものなのではあろうけれども。

● AI検索エンジンによると,「インド市場の大部分は,大手の「ヒンドゥスターン鉛筆(Hindustan Pencils)」と「ドムス(DOMS)」の2大メーカーが占めて」おり,「HBと表記されていても,日本の鉛筆よりかなり濃い(B〜2B程度)ことが多く,筆圧が弱くてもスラスラと書けるのが特徴です」とのことだ。
 ドイツの鉛筆は逆に,同じHBでも日本の鉛筆よりかなり薄い。南になるほど標準の濃度が上がる傾向にあるんだろうか。

2026.06.17 アメリカは Musgrave の鉛筆

● アメリカンな黄色いゴム付き鉛筆については,ちょい書きの結果でしかないけれども,ひととおりのところをまとめたので,次はそれ以外のアメリカ鉛筆について。
 とは言うものの,ぼくはテネシー州に本拠を置く「Musgrave Pencil Company」が製造しているものしか持っていない。ぼくが行ったことのある文具店には Musgrave しか置いてないので。

● 上の写真の4本だが,一番下の「909 CERES」については,すでに紹介しているので,残りの3本について試していく。
 まず銀色の「TEST SCORING 100」。「マークシートやテストの解答欄を塗りつぶすために特別に開発された,非常に柔らかく濃い芯が特徴となっています」と検索エンジン搭載のAIは教えてくれる。言われてみれば納得。

● 「909 CERES」よりは軸も細い。それでも国産鉛筆より太め。キャップや補助軸は市販のものを問題なく使うことができる。六角の角は「909 CERES」同様に角々しい。
 硬度は2Bくらいだろうか。濃いめ,軟らかめが好きなぼくには随喜の涙を流したくなるほどドンピシャリ。マークシートに最適だからといって,それ以外に使ってはいけないなんてことはないわけで,一般筆記に大人が使って何が悪いってなもんだ。

● 最大の特長は滑らかさだ。ここまで滑らかな鉛筆を使うのは,ひょっとすると初めてかも(ちょっと持ち上げ過ぎ? 2Bだからね)。
 Hi-uni,クラフツマン,BLACKWINGなど,芯が黒鉛と粘土を混ぜた焼成体であることを感じさせないくらいの鉛筆はいくつもある。芯をノートに擦り付けている感じをまったく抱かせない鉛筆群だ。そういう鉛筆を良い鉛筆と,ぼくらはしている。
 「TEST SCORING 100」はそれらに勝るとも劣らない。外見は無骨だけれども,非常に繊細な鉛筆だ。

● 「テネシー州シェルビービルにある工場で伝統的な製法で作られてい」るらしいのだが,アメリカの鉛筆は大味なのだろうと思っていた自分を恥じます。申しわけありませんでした。
 ただし,この鉛筆もゴム付きなのだが,消しゴムは使ってはいけない。あと,削るとこんなふうになるから,芯は真ん中に収まっていない。偏っていると思う。それで問題があるわけではないけどね。

● 次は「MY-PAL 2020」。太軸(8.5mmの丸軸)。当然,普通の鉛筆削りの穴には入らない。STAEDTLER や FABER-CASTELL のジャンボ鉛筆を削れる鉛筆削りがあるので,それで削った。
 キャップも使えるものはぼくの手元にはない。補助軸についても同様だが,ギリギリ短くなればクツワのノック式が役に立ってくれると思う。

● 「通常の鉛筆より握りやすく,学習中の子どもや筆圧が弱い人,手の大きい人に適しています」「濃く滑らかな書き心地のHB芯を採用しており,太めの芯のおかげでボールドで濃い線が描けます」というのが,検索エンジンAIの解説。
 濃さは国産鉛筆のHBと考えていいと思う。たしかに芯も太いので,一般筆記に使うとその大半を削り捨ててしまうことになって,少々以上にもったいない気がする。“ボールドで濃い線” を描く用途に使うのがいいのだが,ぼくの筆記シーンにはそうした局面がないのが残念。

● 「TEST SCORING 100」ほどではないが,書き味はスムーズ。芯が太いので,若干重さを感じることになるが,気になるほどではない。
 鉛筆はこれくらいの太さがちょうどいいのかもしれない。STAEDTLER や FABER-CASTELL のジャンボ鉛筆はそもそも一般筆記用ではないだろう。これくらいの太さで2㎜芯の鉛筆はないものか。
 木材を多く消費することになってしまうけど。いや,その前に,軸がこの太さで芯が2㎜だと,軸の先に出る芯が短くなりすぎてしまうか。何とか行けそうな気はするが。

● 3つ目が「BUGLE 1816」。「HBの芯を採用しており」「その軽量さと書きやすさから,多くの学校システムや鉛筆愛好家に選ばれています」ということなのだが,日本基準でもHBだと思う。
 「MY-PAL 2020」よりは少しだけ濃いような気もするが,こちらの錯覚かもしれない。同じく,「MY-PAL 2020」よりも滑らかさにおいてわずかに勝る。

● 丸軸で,いたって普通の太さ。黄色いゴム付き鉛筆の「Dixon Ticonderoga 1388-2」や「Berol Eagle 224」は,ドイツ並みに細かったのだが,Musgrave の鉛筆は総じて(と言っても,全部で4本しか持っていないわけだが)軸太めな感じ。
 あと,芯がいい。キメが細かい。これだったら,アメリカ人,高価な BLACKWING なんか使うより,Musgrave の方がずっと気が利いていないか。