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2026年2月20日金曜日

2026.02.20 上田健次 『銀座「四宝堂」文房具店Ⅴ』

書名 銀座「四宝堂」文房具店Ⅴ
著者 上田健次
発行所 小学館文庫
発行年月日 2025.04.09
価格(税別) 710円

● 『Ⅴ』の小道具は “ものさし” “カード” “ナイフ” “サインペン” “絵具”。
 “ものさし” では中学生コンビの瑛太と晴菜が再登場する。

● 「定番品というのは,その豊富な販売量もあって,価格を抑えながら高品質なものが多いのです」(p203)と主人公に言わせている。ぺんてるのサインペンとボールぺんてるについて主人公が語る場面。
 定番品の代表が Campus ノートだと思うのだが,Campus に限らず,素直に定番品を使った方がいいとぼくも思う。マイナーにこだわるのも別に悪くはないんだけれども。

● 他に以下のような金言も出てくる。こういうのも尖り過ぎてはいけないし,あたりまえ過ぎてもインパクトに欠ける。基本,ある程度に流布しているものである必要があるだろう。
 お客さんの代わりはいくらでもいるけれど,一緒に働いてくれる人の代わりを見つけるのは大変だもの。(p88)
 研ぐのはお前じゃなくて砥石の仕事だ。強く押しつけたからって,うまく研げる訳じゃない。(p160)
 そう,残酷なまでに努力だけでは,どうしようもないものが芸術にはあって,持たざる者が持つ者を超えることはない。(p271)
 好きなことで食べていける生活を羨む人がいるけれど,俺に言わせれば何も分かっちゃいない。好きなことは好きなことにしておくべきだ。日々の糧を得る手段となった瞬間に,そこにはある種の計算が生まれてしまうし,そうあって然るべきだ。(p291)
● ライトノベルだろうと純文学だろうと,小説を読むなんて何十年ぶりだろう。だんだん読み方を思い出してきたというか,早く読めるようになってきた(早く読めても仕方がないのだが)。ストーリーの展開に慣れてきたせいもある。
 本というのは移動中の電車の中でしか読まない(読めない)ものになっていたが,今回は家でもチョコチョコ読めた。

2026年2月18日水曜日

2026.02.18 上田健次 『銀座「四宝堂」文房具店Ⅳ』

書名 銀座「四宝堂」文房具店Ⅳ
著者 上田健次
発行所 小学館文庫
発行年月日 2024.10.09
価格(税別) 730円

● Ⅳの小道具は “リボン” “スクラップブック” “ボールペン” “クリップ” “奉書紙”。4巻目にもなれば,これらを咬ませたストーリーを作るのも手慣れたものだなという印象になる。

● 「糊やペンなどはコンビニでもお求めいただけます。さすがにスクラップブックは置いてないでしょうが・・・・・・。けれど,ネットショップなどであれば当店を遥かに超える品揃えをしておりますし,翌日にはご自宅にお届けするなど配送サービスも充実しております。当店のような小さな文房具店などは,せいぜい丁寧な応接に務めるぐらいしか差別化できる要素がないのが実情です」(p82)と主人公の宝田硯に言わせているのだが,丁寧な応接というのはリアルの文具店ではなかなかないな。
 店員はレジにしかいないもん。こちらに近づいてきて,何かお探しですかと訊いてくる店員はいない。

● そんなことをしたらお客は逃げそうだしね。丁寧な応接を差別化要因にするのは,実際には難しそうだ。
 ただ,店内の空気感がいいなと思うことはある。空気感を作るものは何なのか,ぼくにはよくわからないのだけれども,店主の性格とか人間性が空気に滲みだすってのはたぶんあるのだと思う。とすると,これは技術の問題ではないことになる。

● 銀座について「とても不思議なところよね。モダンなのに日本らしさもあって,気品にあふれているのに親しみやすい,高級なのにお買い得な気持ちにさせて,懐かしい雰囲気なのに新しさを感じさせる」(p246)と登場人物に言わせている。
 ぼくに銀座について語る資格があるとは思えないが,この指摘に概ね賛成だ。ぼく自身,池袋でも新宿でも渋谷でも六本木でもなく,銀座に出ることが多い。銀座が一番カンファタブルだ。
 ただし,ぼくが入れるのは文具店だけ。銀座で飲んだり食べたりしたのは,トータルでも片手で数えられるくらいしかない。飲食は新橋ってことになっちゃうんだわ。

● 「新入りの一番の仕事は元気な挨拶と返事をすることだ」(p148)などとも言わせている。誰からも異論がでないであろう教訓も所々に散りばめて,ストーリーを流していく。
 この教訓が登場するのは今回が初めてではない。これが語られやすい場面設定が何度かあった。

2026年2月11日水曜日

2026.02.11 上田健次 『銀座「四宝堂」文房具店Ⅲ』

書名 銀座「四宝堂」文房具店Ⅲ
著者 上田健次
発行所 小学館文庫
発行年月日 2024.04.10
価格(税別) 710円

● 3巻目の小道具は “ブックカバー” “シール” “原稿用紙” “フィールドノート” “模造紙”。
 “フィールドノート” は測量野帳のこと。1巻目の “メモパッド” は RHODIA だったが,設定も内容も RHODIA を測量野帳に置き換えたような話。

● 各巻とも読切り短編を5つ収めている。どこから読んでもかまわないようになっているが,前に登場した人物が再びチョイ役で出てくることもあるので,できれば1巻目から順番に読んでいくのがいいようだ。

● 「若い人たちには思いついたことを試す権利がある。それはとりもなおさず失敗をする権利に他ならない。(中略)職人の仕事は現場で失敗することによって進化する。試行錯誤をしなくなったら,それはただの作業であり仕事ではない」(p192)とか,「外見の味わいはそのままに,内部の構造物は最新技術を取り入れたものに交換するのは最近の流行りだったりする。「昔は良かった」というような人でも,そのころの不便さまで歓迎する訳ではないのだから当たり前と言えば当たり前だ」(p267)といった,気の利いた世間話で読者を引きつける工夫も,当然,施されている。

● 各話とも,ほのぼのとした,努力と善意が報われる話になっているから,読み終えたあとは意外に記憶に残らない。それまで読んだ話に溶け込んでしまう。
 それでいいのだ。というか,そこが上手いところだ。ライトノベルの王道なのだと思う。

2026年2月7日土曜日

2026.02.07 上田健次 『銀座「四宝堂」文房具店Ⅱ』

書名 銀座「四宝堂」文房具店Ⅱ
著者 上田健次
発行所 小学館文庫
発行年月日 2023.09.11
価格(税別) 730円

● この作品はあくまでライトノベルであって,文房具が主人公になるわけではない。文房具は小道具。
 第1巻で登場した文具は “万年筆” “システム手帳” “大学ノート” “絵葉書” “メモパッド” だったが,Ⅱでは “単語帳” “ハサミ” “名刺” “栞” “色鉛筆”。

● 各々の製品群の中で代表的な,多くの人が知っている製品が登場する。万年筆ならモンブラン,システム手帳は Filofax,大学ノートはキャンパス,メモパッドは RHODIA,単語帳はレイメイ藤井。
 そこが大事であろうことはまぁまぁわかる。

● それらの文具を小道具にしたストーリーを考えるのは,プロの作家にとってはそんなに難しいことではないのかもしれない。
 けれども,おまえもやってみろと言われたら,ま,できませんわね。やはり作家というのは大したものだなと思いますよ。

● ただし,登場人物の属性を一話ごとにゼロから作るのはさすがに大変すぎるのだろう。いくつかに類型化できそうだ。
 登場人物のキャラクターはどれも似たようなもの。「四宝堂」という舞台で読者をホロッとさせるストーリーに仕立てるわけだから,そうならざるを得ないというかね。

2026年1月23日金曜日

2026.01.23 上田健次 『銀座「四宝堂」文房具店』

書名 銀座「四宝堂」文房具店
著者 上田健次
発行所 小学館文庫
発行年月日 2022.10.11
価格(税別) 700円

● 売れてるようですね。2025年4月で19刷。小学館文庫で6巻まで出ている。
 第1巻を読んでみました。あったらいいなと思わせるファンタジーですよね。悪人は登場しない。一服の清涼剤。

● 話材の小道具として登場するのは,モンブランの万年筆,Filofax のシステム手帳,Campus ノート,絵葉書,RHODIA のメモブロック。
 それぞれの分野の代表的なというか古典的な製品だ。Filofax,Campus,RHODIA はぼくも使っている,あるいは使ったことがある。

● Campus について,主人公(四宝堂の主)に次のように言わせている。
 オリジナルノートまで作っておいて何なのですが,コクヨのキャンパスシリーズの完成度は相当に高いです。『あの品質でこの値段』という観点で比べると脱帽です。(p178)
 ついでに,あと2つ転載しておく。
 包丁や俎板,鍋釜は商売道具だ。自分の腕や手だと思って丁寧に扱え。そうでないと言うことを聞いてもらえない。(p300)
 結局はいつまでも成長したいっていう向上心があるかどうかなんだ。でもって,向上心の有る無しを見分けるのは簡単さ。メモをとるかとらないか,ただそれだけ(p302)
 つまり,登場人物の価値観や身の処し方も古典的なものだ。あるいは保守的なものと言ってもいい。

● 第2巻も買ってみた。こちらは,2023.09.11の初版で2025.12.21で12刷。しかも “大重版” なんだから売れてるんですな。今どき,珍しい。
 “読者の皆様から届いた声” を見ると,読者は年配者が多いらしいのだが。

● ぼくは手書き派なのだが,ペンや鉛筆を取りあげられても,さほどに痛痒は感じないと思う。パソコンかポメラを使う。
 が,本は電子ブックに限ると言われると,いささか反抗的な態度に出るかもしれない。本は紙でなければ読む気がしない。Kindle には Kindle の便利さがあることは理解するのだが,タブレットの画面で活字を読む気にはならない(漫画ならOKだ)。重くても紙の本を持ち歩く。

● 蛇足。表紙に描かれている四宝堂は入りづらそうな店だよね。敷居が高そうだ。
 ドアが閉じられていて,しかも中が見えない。これじゃ客は来ないぞ。一見さん,お断り,のオーラが出ている。
 表紙の場面は閉じているのが似つかわしいシーンなのだろうな,とは思うんだけどね。

2025年11月8日土曜日

2025.11.08 西岡壱誠 『「思考」が整う東大ノート』

書名 「思考」が整う東大ノート
著者 西岡壱誠
発行所 ダイヤモンド社
発行年月日 2023.10.03
価格(税別) 1,500円

● 著者は偏差値37から二浪して東大に行った人。偏差値37が本当かどうか知らないけれども,二浪する価値が東大にあるかと言えば,どうなんだろうかね。
 しかし,二浪して東大に行った人が書いたノート術の本と言われると,何となく信用してみたくなりませんか。

● 基本,勉強ノートについての話。インプット型の勉強になど興味を失って久しい。大学に対する幻想も崩れ去った。
 ので,具体的に参考にするような局面はない。仕事を抱えている現役世代にとってはどうだろうか。

● 以下に転載。
 「分かる」と「分ける」は本質的には同じものです。自分が理解できる大きさになるまで分解することで,物事を理解できるようになります。(p28)
 タンスの大きさ自体は同じであっても,情報の畳み方がきれいだから,うまく収納スペースを使えるのです。(p33)
 メモノートにおける分解・整理の最終ゴールは,この「タイトルをつけて順序立てていく」ことになります。(p50)
 「問い」を大きなテーマとして配置して「◯」として書きます。そして,その「大雑把な答え」を「●」で書き,その詳細を「◉」で書いていくのです。(中略)注意しなければならないのは,その情報のレイヤーを合わせるということです。(p74)
 ひとつの原因で複数の問題が発生している状態のことを,「問題の本質」,なんて呼ぶことがあると思います。本質とはこのように,複数の物事の原因になっているわけですね。(中略)通常,「本質」は表には出ません。今,目に見えるものは,下流であることが多いのです。(p122)
 重要なのは,自分の言葉でまとめることです。「重要な部分だけ抜き出そう」と考えるのではなく,情報を読み取って,自分の言葉で言い換えてみましょう。(p178)

2025.11.08 iPad の解説書,2冊

「iPad仕事術 2019」
発行所 廣済堂
発行年月日 2018.12.25
価格(税別) 1,200円

「iPad仕事術 SPECIAL 2018」
発行所 廣済堂
発行年月日 2018.05.10
価格(税別) 1,100円

● iPad なんて持ってないし,これからも持つことはないと思う。にもかかわらず,こういう解説書を買ってしまう。
 そのあたりがアップル製品の訴求力の高さでしょうかね。使うことはないとわかっているのに,気にさせるところがある。

● 上記の2冊以外にもいくつか眼を通してますよ。とは言っても,この2冊は長らく放置してました。この分野で6年も前のものはまったく参考にならない。
 一応,斜め読みしてみた。iPad のアプリの解説書でした。となると,いよいよ参考にならない。

● iPad を仕事に使うというところに惹かれたんだろうと思うんですけどね。ぼくは仕事から離れてしまっているんだけど,慣性の法則がまだ利いてるんですかねぇ。
 いや,会社の仕事だけが仕事じゃないからさ。個人でいろんな作業をするときも同様のアプリを使うことになるので。

● 「iPad仕事術 SPECIAL 2018」では「これまでは,Webや電子書籍,写真を見るための,万能「ビューア」という側面の大きい機器であったが,Apple Pencil の登場により,(iPad は)イラストや文字を積極的に手で描くための「作成」するツールに変わった」(p6)と言っている。
 そうなんですか? Apple Pencil はそれほどの画期になったんですか。

● 何となく,iPad はクリエイティブ御用達のイメージがある。つまり,こちらの劣等感を刺激するところもある。iPad なんて持つことはないと力んじゃうのも,ひとつにはそれが理由かも。
 ま,一番の理由は iPad が高すぎることだけどね。Android Tablet に比べると,ずいぶん高いもんね。

2025年11月3日月曜日

2025.11.03 戸田 覚 『仕事と勉強ができる人のリアル「ノート&メモ」術』

書名 仕事と勉強ができる人のリアル「ノート&メモ」術
著者 戸田 覚
発行所 翔泳社
発行年月日 2024.03.18
価格(税別) 1,600円

● 副題は「各回で活躍する20人のリアルなノートから学ぶ!」。その20人のうち,第1部に登場するのは以下の人たち。
 髙橋拓也(毎日,文房具。編集長)
 青木人志(アチーブメント株式会社社長)
 峯丸ともか(海外ドラマ・映画ライター)
 岡﨑弘子(有隣堂)
 石川日出志(考古学者)
 橋本瑞生(外科医)
 根津孝太(デザイナー)
 ささきあやこ(クリエーター)
 佐藤ねじ(アートディレクター)
 德田毅(精神科医)
 みおりん(勉強法デザイナー)
 著者自身

● 人が何を使ってどう書いているのか。昔は興味があったし,参考にしようという姿勢もあったように思う。
 が,自ずと自分のスタイルができるもので,それができたら他者を見ない方がいいかもしれないな,と考えるようになった。齢をとって,毎日が日曜日になったからかもしれないけど。

● ので,本書もノウハウを学ぼうとしてではなく,読みものの1つに選んだに過ぎない。
 本はどんなジャンルのものであれ,読みものとして面白ければ,それで良し。

● 以下に転載。
  情報を蓄積管理し,再活用しようと思うのならデジタルのノートが正解である。だが,書いたものを見て幸せを感じたい,達成感をえたいなら,アナログに勝るものはないということ。(p3)
 今のノートは67冊目(髙橋拓也 p13)
 野帳だと画面が小さすぎてうまくスケッチが描けないんです。(石川日出志 p42)
 いわゆる横罫線では図が描けないんです。特に円形が難しい。そこで5ミリ方眼を愛用しています。一時期3ミリ方眼も使いましたが,細かすぎてダメでした。(石川日出志 p42)
 最近は,ノートが増えるスピードが上がっているんです。歳を取ってくると時間がなくなるじゃないですか(石川日出志 p45)
 形から入るだけだと作りにくいデザインをしてしまう可能性がある。だが,構造や素材を理解していればそんなことがなくなるわけだ。(p57)
 ノートは,情報を記録したり,アイデアをまとめるツールだと一般的には考えるわけだが,実は,我々の知らないところで密かに大きな進化を遂げていた。なんと,「インスタグラムで見せる」ツールへと変貌しているのだ。(p64)
 プロは道具にこだわるが,使うものは絞り込む。(p67)
 紙のノートが最高ですという本を出版したのですが,そのあとに iPad が進化して移行しています。今は,Mac もよく使っています。(佐藤ねじ p72)
 OneNote を選んだ理由は明確で,マイクロソフト製だからだ。Evernote も有料会員で併用しているのだが,今やトラブルでログインができなくなった。(p98)
 一度見た情報を再度探すのは時間の無駄と長年の仕事で気づいている。(p100)

2025年10月12日日曜日

2025.10.12 日経TRENDY 2025年11月号−得する手帳革命

編者 澤原 昇
発行所 日経BP社
発行年月日 2025.10.04
価格(税別) 709円

● 日経BPの雑誌の手帳特集をもうひとつ。これは5分程度でサラッと見た。本屋で立ち読みすれば充分な程度だな。

● 最初に「2028年8月には,ロフトの手帳の売り上げが前年同月比110%に近い伸びを記録」(p17)とあって,そうなのかと意外に思った。
 そんなふうには全然見えなかったので。伸びているのは「ほぼ日」くらいで,能率や高橋のビジネス手帳は苦戦しているのではないかと思っていた。自分が百均手帳に移ったから,そう感じでしまったんだろうか。

● 雑誌の性格から,主にはデジタルを使った時間管理,仕事管理のお勧めになっている。
 デジタルでやっている人の過半は Google Calendar を使っているだろう。Google のアプリは単独でも使えるが,複数のアプリを連携させて使える仕様になっていて,Calendar と Keep を連携させている人は普通にいそうな気がするが,Keep と Gemini の連携のさせ方なんかが解説されている。
 が,ぼくの頭には入ってきませんわ。そんなことをする気が端からないからでしょ。あっても入って来ないかもしれないけどね。アプリの連携などという高度なことは,ぼくの手に余りそうだ。

● Keep は単独で使ってはいる。最も使用頻度の高いアプリだが,単純にメモを録るだけ。おかげでフリック入力が速くなった。
 このブログも,以前はパソコンを使っていたが,今はスマホで入力している。この程度の長さならフリックで不都合を感じない。

● 手帳に関しては百%アナログ派だが,デジタルを否定するつもりはサラサラない。シャープの Zaurus の頃からデジタルでやっている人も多いだろう(さすがに電子手帳はあかんかったと思うが)。
 ぼくも気持ちが動いたが,踏み切れなかった。踏み切れた人は大したもんだ。

● この雑誌に限らず,雑誌を読むことは普段は皆無に近い。ぼくの場合は加齢のしからしめるところかと思うけれども,活字離れが確実に進んでいる。
 が,たまには,こういう雑紙を読んでみるのもいいかもしれんね。たとえば,インバウンドの各県別の増加率や,どのくらいお金を落としてくれているかがわかる。
 ネットでもわかるはずだが,調べてみようと思わせる最初の一撃がないと,結局は調べずに終わる。紙の雑誌は,否応なしにこうなんだよと情報を突っ込んでくれるからね。

2025.10.12 日経WOMAN 2025年11月号-書いて未来を切りひらく 手帳術2026

編者 佐藤珠希
発行所 日経BP社
発行年月日 2025.10.07
価格(税別) 900円

● 日経WOMANの11月号は手帳特集。以前は必ず読んでいたんだけれども,最近は見送ることもあるようになった。
 今年のは読んでみたんだけども,費やした時間は10分足らず。こういうのを読んだとは言わない。斜め読みにもなっていない。

● 人様がどんな手帳の使い方をしているのか。何をどう書いているのか。そういうことに興味がなくなった。
 どんな手帳があって,自分に合いそうなのはどれなのか。それもどうでもよくなった。

● そうなった一番の理由は,自分が隠居生活に入ったことだと思う。手帳の重要性がかなり低下した。
 隠居者こそ手帳を使うべきだと思っているが,使い方は仕事メインの現役世代とは違ってくる。極端な話,使ってさえいれば(それによって,今日が何月何日何曜日かというのをキチッと認識できていれば)どんな使い方でもかまわない。
 何なら,何も書かなくたってかまわない。毎日1回でも手帳を開いて暦とつながるようにしていれば,それで充分だと考えている。

● もうひとつ,自分の手帳の使い方が固まっていて,それを変えるつもりがないのも,他者への興味が失せた理由だな。
 管理するほどの予定はない。その日のログを残しておくことによって,その1日が過去に溶け出してしまうのを防ぐ。あの日に何をしたのか思い出すヨスガを残す。手帳を使うの理由はその一点だ。
 残すほどのことをしているのか,という質問は武士の情でしないでもらいたい。

● 具体的に使う手帳も去年から百均手帳になっている。これからずっと百均手帳でいいと思っているので,手帳そのものに対するこだわりもない。

● この雑誌には “私が忘れられない言葉” と題する連載があるようで,各界の著名人にインタビューしている。今月は作家の朝井リョウ氏。
 彼は遠慮を手放すということを語っている。手帳とは関係ないのだが,こちらの方が面白かった。
 死ぬときに「もっと遠慮しておけばよかった」なんて絶対に考えないんだろうな,ということ。「かれもこれも,もっとやっちゃえばよかった」と後悔するゆですよね,きっと。だから少しずつ “遠慮” を手放そうとしています。(p13)
 頼る=自分の弱点を晒す,と考えすぎているんでしょうね。でも,人から頼られたときのうれしさを考えると,そんな等式は間違っているなと思えます。(p13)

2025年9月14日日曜日

2025.09.14 キャロライン・ウィーヴァー(片桐晶訳)『ザ・ペンシル・パーフェクト』

書名 ザ・ペンシル・パーフェクト
著者 キャロライン・ウィーヴァー
訳者 片桐 晶
発行所 学研プラス
発行年月日 2019.12.17
価格(税別) 3,000円

● 副題は「文化の象徴 "鉛筆" の知られざる物語」。鉛筆好き,文具好きにとっては,バイブル的な本になっているっぽい。
 ぼくはまだニワカ鉛筆族の域にいる人間だが,遅ればせながら目を通してみることにした。

● 内容は鉛筆史。鉛筆と鉛筆に関わった人間の足跡をかなり詳細に調べてまとめている。もちろん,先行業績は色々ある。著者が一番お世話になったのはヘンリー・ペトロスキー『鉛筆と人間』らしい。何度も引用している。
 にしても,よくもまぁこれだけ調べたものだと感嘆する。

● 鉛筆が今の鉛筆になるについては,いくつかの発見・発明と偶然が与っている。画期的な発見と発明ば比較的初期に現れる。それらについても著者は丹念に紹介しているのだが,あまり面白くない。
 日本史でも先史時代や古代はあまり面白くないのと同様か。いや,そんなことはない,逆だ,と言う人もいるだろうけど。

● 本書の後半では,消しゴム付き鉛筆のフェルールがどうとかいう話が出てくる。およそどうでもいい話なのだが,それが逆に面白いから困ったものなのだ。
 自分に引き寄せやすい具体的な話の方に人は惹かれるということなのだろう。

● p28に「1900年頃に製造されたA.W.ファーバー製の銀のポケットペンシル」の挿絵が載っている。「木の部分を金属ケースに差し込めば,便利な筆記具ができあがる」というやつ。
 現在の Faber-Castell のパーフェクトペンシルはこいつのオマージュなのかね。書く・消す・削る が1本でできるからパーフェクトというのは,販売のトリガーを作るための方便で,Faber-Castell だってそんなのをパーフェクトだと信じているわけではないだろうからね。

● 本書の欠点はB5サイズと大きいこと。おまけに厚い紙を使っていて,重量もかなりある。電車の中で読むには不向きだ。机かテーブルが必要になるだろう。
 ところが,ぼくは自宅ではまず読書というものをしなくなった。読むのは電車に乗っているとき(しかも座れているとき)に限られる。それゆえ,読み進めるのに難儀した。

● 以下に転載。
 何よりも重要なのは,鉛筆の硬度基準は世界共通の規格ではないということだ。(中略)アメリカの規格基準局がこの難題に取り組んだことがあったが,詩っぱに終わっている。(p72)
 わたしはいまも,フェルールからかつての独創性が失われてしまったことをとても残念に思っている。(中略)わたしの知る限りでは,パロミノ社が復刻したブラックウィング602のフェルールがいま現在も製造されている個性的なフェルールの唯一の例であり,そのフェルールでさえ,かつての姿とまっく同じというわけではない。(p105)
 1970年代にファンシー鉛筆の潜在能力を最大限に活用すてみせたのが日本だ。(中略)日本では,ファンシー鉛筆を専門に扱うリボン鉛筆会社を含めたさまざまなブランドが参入していた。(p117)
 ありがたいことに,日本のアイボール鉛筆が,集めたくなるだけではく実際に楽しく使える製品をつくってくれている。(p122)
 同社(ジェネラル・ペンシル・カンパニー)の工場はいまでも故郷のジャージー・シティーで操業していて,国内においては,創業時から製造を続けている最後の工場と認識されている。(p127)
 鉛筆を日常的に使っている人は,日本の鉛筆がほかの国とは別種の存在であることを実感として知っているはずだ。(中略)日本ほど文房具に情熱を傾けている国がないことは明らかだ。(中略)文房具と真剣に向き合う顧客が相手なのだから,商売をするほうも真剣だ。(131)
 日本の文具店で真っ先に気づくのは,さまざまな硬度の鉛筆がすべてばら売りされていることだ。(p131)
 日本の鉛筆業界の最盛期には,125社を超える企業が存在していた。当時に比べれば業者の数は激減したが,日本の鉛筆製造の伝統はいささかも損なわれていない。(p134)
 日本の文具店でのショッピングはというと,鉛筆とその多彩な関連商品にどっぷりと浸っていられる,ほかでは決して味わえない体験だった。(p135)
 不思議なのは,アナログな道具の復権が進むにつれ,国家認定の鉛筆界の英雄を自負するブランドがつくる,入手しにくい製品を求める風潮が高まっていくことなのだ。(p145)
 ファーバーカステルやステッドラーの場合は,長い歳月で培われてきたドイツの老舗としての評判や歴史が製品そのものを凌駕するほどだ。背景に物語があるからこそ,こういった鉛筆が売れているのだ。(p147)
 インターネットが一般向けに公開される1年前に,ヘンリー・ペトロスキーの『鉛筆と人間』が公開されている。鉛筆の歴史をまとめた包括的な資料としては唯一のものであり,机に向かったまま膨大な情報を入手できるようになる以前に書かれたという意味で称賛に値する本だ。(p148)
 鉛筆で文字を綴るのは,確かな自由が約束された,心と直接結びつく行為であり,それはコンピュータには絶対に入り込めない領域だ。(p151)

2025年8月8日金曜日

2025.08.08 柳沢小実 『「自分ログ」で毎日が変わる 手帳のある暮らし』

書名 「自分ログ」で毎日が変わる 手帳のある暮らし
著者 柳沢小実
発行所 大和書房
発行年月日 2024.12.01
価格(税別) 1,500円

● ノートや手帳の世界は昔とはずいぶん違ってきている。世界というか,使われ方が違ってきている。
 昔のノートは勉強のため,調べもののため,記録を録るためにあった。手帳はスケジュールを記して,締切や約束を忘れないようにする(結果として,他者に迷惑をかけない)ためのものだった。

● 今も基本はそうなのだろうが,ノートや手帳がコミュニケーションのツールにもなってきた。デコる,可愛く仕上げる。それを人に見せたり SNS にあげて,“いいね” をしたりされたり。
 一方で,自分の時間を楽しくするためのものにもなっている。ノートや手帳で遊ぶ。何かをするための手段としてではなく,ノートや手帳を書(描)くことが目的化する。自己満足の自己完結。
 それを牽引してきたのはもちろん女性で,男性の多くはそれには追随していないだろうから,これは女性の世界と言っていいんじゃなかろうか。

● 本書はその王道を行くものではないが,その系譜に連なるものではある。

● 以下にいくつか転載。
 手帳は単なるスケジュール管理ツールではなく,よりよい日々をクリエイトする並走者のようなもの。そう意識するようになって,ライフログを書き込む量も年々増えてきました。(p4)
 手帳やノートを書く時間は,自分自身と内緒話をしているよう。書いていると充足感に包まれます。(p12)
 私が今後もっともやりたいのは振り返りのコメントを書くこと。(p94)
 自分のためだけに書いているごくパーソナルなものなのに,書いた瞬間に自分とは切り離される。だから,キレイに書く意味はあると思っています。(p96)
 イラストが苦手な人は,簡単な四角や丸をいつもと違う色で描き込むことに慣れるとよいですね。(p119)

2025年6月29日日曜日

2025.06.29 『日本文房具クロニクル』

書名 日本文房具クロニクル
発行所 辰巳出版
発行年月日 2024.06.01
価格(税別) 1,600円

● 基礎的な間違いを指摘されて話題になった文具本。三菱鉛筆の9800を「現在は生産終了」とやったり,同じく三菱鉛筆の9000を「リサイクル鉛筆『9800EW』としてリニューアルされた」とやらかしたり(どちらもp18に登場する)。
 特に,9000の後継が9800EWだというのは,なぜそう思っちゃったのか,詳しく知りたいくらいだ。AIに取材させたんだろうか。

● p19ではトンボの手回し式鉛筆削りの初代器を「アメリカから導入された,APSCO社製卓上タイプの削り器CHICAGOを参考に作られている」と紹介しているが,ここまで似ているものを参考にしたとは言わない。パクったという。
 が,このあたりは大人の事情というやつがあるから,こういう書き方になるのは仕方がないとお察しはする。

● 章間にコラムが置かれており,それを書いているのは高木芳紀さん。
 「仕事をパソコンで行う割合が増え,文房具は癒しの道具という位置づけにシフトしたことで,特に女性を中心に文房具を趣味とする層が形成され,“文具女子” という言葉も生まれた」(p218)とかね。

● クロニクルとは年代記という意味らしい。日本で生まれた文具を写真をメインに年代順に紹介している。昔懐かしい文具がたくさんある。
 そうだった,こんなCMもあった,と懐メロを思いだす。子供の頃,欲しかったやつだ,とさほど幸せでもなかった子供時代を彷彿させる。
 学術書ではないのだから内容の正確性にはこだわらない,雑誌やムック本はそんなもんでしょ,というのであれば,充分に楽しめる。

2024年11月24日日曜日

2024.11.24 Marie 『今日の自分を肯定する箇条書き手帳術』

書名 今日の自分を肯定する箇条書き手帳術
著者 Marie
発行所 ディスカバー・トゥエンティワン
発行年月日 2022.05.30
価格(税別) 1,500円

● 数年前からよく聞くようになった言葉に「バレットジャーナル」がある。今はすでに峠を越えたのではないかとも思えるのだが,バレットジャーナルっていったい何?
 いろいろ情報は入ってくるのだが,断片的で全体像が掴めない。

● ま,正直,あまり興味もないので,そんなに知りたいと思っているわけでもない(提唱者の本も買ったのだけど,まだ読んでいない)。ので,現状で支障はないのだけれども,流行りのものの内容をざっとでいいから知っておきたいとも思う。
 それが本書を読んだ理由。提唱者の本より薄くて,すぐに読めそうだったのでね。

● で,読んでみたんだけれども,バレットジャーナルとはそも何者なのかはわからなかった。
 ま,いっか。知っておきたいというだけなんだからな。バレットジャーナルを自分でやってみようとは1㎜も思っていないわけなんで。毎日が日曜日のぼくがバレットジャーナルなんてチャンチャラおかしいでしょ。時間を有効活用しなきゃいけないなんて状況にはないんだからね。

● 以下にいくつか転載。
 バレットジャーナルの開発者,ライダー・キャロル氏は2019年の来日時,インタビューにて「スケジュールはデジタルで管理しています」とさらっと答えておられました。(p10)
 バレットジャーナルの弱点は「予定管理のしづらさ」。(p35)
 こうしたアプリ(Android の場合は「Digital Wellbeing」)を使うことで,SNS をチェックしながらも,「ああ,いま私はツイッター使用時間の記録を着実に伸ばし続けている・・・・・・切り上げなくては」と頭のどこかで考えるようになります。(p57)
 日々,無事に生きているだけでも,かけがえのない経験を重ねているのです。手帳に書いてあってもなくても,起こった瞬間はその重要性に気づかなくても,日々のできごと一つひとつが,自分の未来にとって意味のあること。手帳の振り返りは,追いすぎず,求めすぎず,通り過ぎるものを見送るくらいでいいのだと思います。(p133)
 いろんな場面で,この「実際よりも大変だと思い込んでスタートに時間がかかる」という現象が起こってしまいます。(中略)そこで,自分にも「定型アクション」を作ってやることにしました。(中略)ぼけーっと頭が働いていないときでも,書いてあるとおりにやればなんとかなるというリストです。(p156)
 やりたいことって,漠然としすぎていて,どこから考えていいかわからず戸惑いますが,この楽しかったことリストを足がかりに,「その先にあるもの」を探せば,やりたいことリストを100個並べることも実現しそうです。(p199)

2024年5月16日木曜日

2024.05.16 小日向 京 『考える鉛筆』

書名 考える鉛筆
著者 小日向 京
発行所 アスペクト
発行年月日 2012.04.06
価格(税別) 1,500円

● 沢野ひとし『ジジイの文房具』が面白かったこと(まだ読み終えていないが)。3月から鉛筆をメインの筆記具にしてみたところ,鉛筆をすっかり気に入っているのに,その理由が自分でも判然としないこと。
 その2つから,小日向京『考える鉛筆』をひっぱり出して再読してみた。

● 以前に読んだときには鉛筆を使っていなかったから,ほぅほぅこんな人がいるのか,と思うにとどまっていたのだが,今回はさすがに自分に引きつけて読むことができた。一気通貫で1冊を読んだのは久しぶりだ。
 ただし,自分がなぜ鉛筆に惹かれるのかはなお分明でない。自分で考えないとダメなんだな。

● 以下に転載。
 ものごとを思考するときにはあえて鉛筆を選びたい。なぜなら鉛筆は,思考の流れをさまたげない筆記具であるのと同時に,次の思考の流れを湧きだしてくれる筆記具であるから。(p10)
 鉛筆は(中略)紙面に対して「横の流れ」ですべらせていくものだ。一方,紙面にたいして「縦に押さえつける負荷」をかけ,紙に描線を彫りこんでいく筆感の筆記具がある。ボールペンや,一部のシャープペンシルなどがそれだ。縦の負荷をかけながら書くと,手が押しこむ力を加えようとするあまりに,そちらに気をとられてしまう。(中略)ものごとを考えるときには,筆圧のほぼかからない状態で,頭の中に浮遊する言葉をつかまえることに集中したい。(p11)
 鉛筆は,書きすすめていくうちに芯の尖り具合や丸まり具合が変化し,芯が短くなっては削り,削っていくうちに軸が短くなり,その姿を刻々と変えていく。その変化が自分の心情の変化とシンクロしていく呼吸感がある。(p11)
 鉛筆の削りかすからは心地良い香りを鼻に感じる。そして削り上げた鉛筆の削り口を眺めると,新たな思考に向かおうという心意気が湧いてくるのだ。(12)
 鉛筆は筆記具のひとつなのではなくて「鉛筆」なのだ。(p12)
 軸の形や色,太さ,芯の濃さやなめらかさ,削り口の形,あらゆる方法で自分流にカスタマイズできるのが,鉛筆の絶大な魅力だ。(p12)
 鉛筆と過ごす時間のなかでもとびきりに楽しいのは,鉛筆を削るひとときだと思う。(p14)
 刃にあたった削りたての木軸と黒鉛芯の削りかすが奏でる香りの競演は,もはやアロマテラピーの一種といってもいいほど。この香りを感じたいから鉛筆を削りたくなる,といっても過言ではない。(p18)
 (DUX・インクボトルシャープナーは)一度使うと手放せなくなる削り器だ。透明なガラスボトルに削りかすが見えるのもきれいで,「ガラス越しにものを見る美しさ」を実感する。(p28)
 鉛筆の木軸をナイフにあてたら,刃ではなく鉛筆のほうを動かして削る。(p43)
 自分の筆記具の握りかたはひとつしかないと思いこんではいないだろうか。長年文字を書くうちに,筆記具の握りかたには癖ができてくる。(中略)そうした「手癖」はあくまでも自分の筆記具の握りかたの基本型として,それはそれで継承していけばいい。(p53)
 鉛筆を何本か持ち歩くのなら,一本一本にキャップを使わずまとめて布でくるんでしまうのが手っ取り早い。そんな布にぴったりなのが日本手拭いだ。(p77)
 わたしたちが道具を使う目的は「それを後生大事に綺麗に使うこと」なのだろうか。(p92)
 なめらかだから「いい」鉛筆とは限らない。ときには粒子の粗い芯に思考を刺激されることもある。また,その鉛筆を使う紙によっても違う。(p104)
 丸軸鉛筆の機能は,落としても芯が折れにくいことにあるのだという。よって芯のやわらかい色鉛筆に多用されており,色鉛筆のほとんどが丸軸の形状をしているのはそういう理由だ。(p111)
 丸軸の良いところは何よりも「握っていて軸の角に手が影響されない」という点にあるだろう。(p111)
 装飾軸のなかでも鉛筆としての存在感を一段と際立たせているのが,(中略)ファーバーカステルの伯爵パーフェクトペンシル用の「No.5」という鉛筆だ。(中略)使いこめば使いこむほど木軸が手の脂を含んで光沢をたたえてゆく様が見事で,一度使うと手放せなくなる。(p123)
 手にするたびに見惚れてしまうのが三菱鉛筆ハイユニの塗装だ。一般に鉛筆の塗装は何度も重ね塗りをしているそうだが,ハイユニのラッカー仕上げの美しさは他の追随を許さないほど。ユニと見くらべても軸表面の滑らかさが格段に違う。(p125)
 (補助軸は)実に魅惑的な小道具で,日々鉛筆を使いつづけた最期に与えられる褒美のようなものだ。(中略)補助軸に魅せられてしまった者は,新品の鉛筆をほどよいところで半分に折ってしまうのも一案なのではないだろうか。(p128)
 鉛筆の唯一の弱点は軸が細すぎることだと思っている。補助軸は,長さを加えるだけでなく,太さを付加する鉛筆の補装具でもある。補助軸に挿して使う方が,鉛筆は書きやすい。
 しかし。その細さが鉛筆のフォルムの美しさを作っているのでもあって,補助軸はその美しさも隠してしまう。せめて貫通式の保持軸を使うのは控えて,鉛筆が長いうちはクツワのぴゅにゅグリップのような握り部の太さを加えるような補装具を使うといったあたりが落とし所か。
 昨今の消しゴム付き鉛筆の消しゴムはすごい。本当に消えるのだ。(p132)
 わたしは鉛筆で書くときにほとんど消しゴムを使わないようにしている。鉛筆から消しゴムに持ちかえた隙に,思考がどこかへ逃げてしまうように感じるからだ。しかし(消しゴム付き鉛筆の)消しゴムならばスピーディーに動作できて,逃げようとしても追いつけるなと思う。(p132)
 この天冠部の一番の利点は「ちょっと疲れたときのツボおしに使える」ということだ。(p135)
 これ(原稿用紙)がすさまじくいい。大人になったいまとなっては,文字数にも文章内容にも縛られることなく,自由にこの紙を鉛筆で楽しみたい。(p145)
 鉛筆で気持ちいいのは,東京・神楽坂下の山田紙店の原稿用紙。(中略)二〇〇字詰めで一〇〇枚二六〇円。あまりの安さに恐縮してしまう。(中略)オーソドックっすなルビ罫付きの原稿用紙なら,コクヨのA4サイズ四〇〇字詰め原稿用紙「タテ書き ケー70」五〇枚入りが鉛筆向き。(中略)この紙に書いた鉛筆文字にも,山田紙店のものと甲乙つけがたいほどに魅入られてしまう。(p146)
 とくに芯が丸まりきって,そろそろ削らないと芯が見えなくなってくるんじゃないかというくらいの鉛筆で,付箋に慌てて走り書きをするときの爽快感といったらない。(p147)
 機能と品質というのは優良なものだけが「いいもの」とは限らないことをmeadの5×3カードは教えてくれる。(p151)
 鉛筆がある,紙も見つけた,世界はもうわたしのものだ,ぐらいの勢いでいこうではないか。(中略)ものに恵まれることは経済的には幸せではあるけれど,思考的な幸せとは必ずしもいえない。「それしかない」という状態は,少なくとも思考に工夫を生みだす。(p183)
 鉛筆には正しい握りからというのは本来存在しないはず。(中略)なぜなら鉛筆は芯先のあらゆるところからでも書くことのできる,変貌する筆記具だから。(p185)
 「綺麗に記録したい」という徹底的な願望は,手書き文字を記すことに緊張が伴い,ともすると綺麗な線と文字で記すことじたいが目的となってしまう。そこに自由な思考はあるか。(中略)思考する文字はきたなくても良い。間違っていても良い。文字の形など整っていなくても良い。自分のなかの混沌とした乱雑な部分を認めてやろう。(p187)

2024年3月31日日曜日

2024.03.31 淡交社編集局編 『京都 神と文具 ガイド&スクラップブック』

書名 京都 神と文具 ガイド&スクラップブック
編者 淡交社編集局
発行所 淡交社
発行年月日 2022.03.26
価格(税別) 1,400円

● 写真がメインで文章は従。文章はパスして,写真だけを見ていった。

● 第1章の「紙の手ざわりをたしかめて」に登場するのは,京都ならではの店ばかり。いや,奈良にも店舗を構えているところもあったか。
 いわゆる和っぽい紙製品が紹介されている。けっこうなマニアでなければ用がないところだとぼくなんぞは思ってしまうのだが,本書の読者はほとんど女性と思われるところ,その女性の中にはこの程度は守備範囲に入っている人がいるんだろうか。いるんだろうな。
 贈答文化というのは基本的に女性のもので,贈るのはモノに限らず,言葉(文字,文章)も含まれる。平安の御代から女性の守備範囲だ。

● 本書は京都のガイドブックでもある。顧客の多くは観光客なんだろうか。今だと外国人の女性が多いのだろうと推測する。
 これらの店は京都の観光資源でもあるだろう。銀座の伊東屋が東京の観光資源であるのと同じだ。伊東屋で日本の文具を見繕うために来日する外国人観光客がけっこうな数いるだろう,と思っている。

● 第2章は「お気に入り文具を探しに」。ここには,鳩居堂やANGERSのように東京などにも出店しているところ,丸善や伊東屋のように本店は東京にあるところも登場する。
 以上の4つは,東京に出た折りには,しばしば立ち寄るので馴染みがあるといえばあるのだが,京都の店舗には京都ならではの品揃えがあるのだろうな。

● 筆や硯を専ら扱っているところもある。日本の文化や伝統を体現しているという感じの,ぼくにはかなり敷居が高いと思わせるところ。ガサツな人間,立ち入るべからずというね。
 こうした本で見るだけにしておいた方が身のためだと思います。近寄りがたい世界というのがあった方がいいと思うしね。

2024年3月29日金曜日

2024.03.29 てん(河野友美) 『てんのしごと道具店』

書名 てんのしごと道具店
著者 てん(河野友美)
発行所 エムディーエヌコーポレーション
発行年月日 2023.03.21
価格(税別) 1,400円

● 副題は「しごとがぐんっと楽しく効率的になる文房具」。ザッと読んだだけというか,紹介されている文具の数々を見ていっただけというか。
 何せ,ぼくは仕事というものから離れて丸4年が過ぎているので,仕事の道具という発想で文具を見ることができなくなっているので。

● 反面,こういう文具が今は世の中に出ているのかとも思ったり。そのいくつかを紹介すればいいのかもしれないが,それもぼくの任ではないような気がする。
 実際に仕事をしていない者が仕事道具について語るな,ってことね。

● ただ,この本で紹介されている文具のけっこうな部分が,コロナ禍のリモートワークがきっかけで登場したもの(だと思う)。コロナ禍で働き方が大きく変わり,文具に求められるものも変わった。
 というより,メーカーが一生懸命に考えて,こんなのはどうですかと市場に提案したのだろう。すぐに消えたものもあれば残ったものもある。

● コロナが収束して,働き方も下に戻ってしまったように映る。となると,これらの文具の行く末も気になるところだ。
 いや,そうでもないのかね。リモートワークを選択肢に残している企業もけっこうな数,あるんだろうか。そのあたりのこともよくわからない。

2023年12月24日日曜日

2023.12.24 mizutama 『はじめての万年筆とインクの本』

書名 はじめての万年筆とインクの本
著者 mizutama
発行所 エクスナレッジ
発行年月日 2023.08.19
価格(税別) 1,680円

● 現在の文具界を牽引する mizutama さんの新刊。万年筆とインクについての解説もあるけれども,それは本書の一部。メインは,万年筆とインクを使って絵を書くための初歩的な教本であるところ。
 たとえば,線にグラデーションをどうつけるか,といったことが解説されている。

● mizutama さんの本とあれば,そうだと思って買う人がほとんどだろうけど。万年筆とインクについて知識を得ようと思ってこの本を買いました,という人はまさかいないだろうけど。

2023年6月20日火曜日

2023.06.20 趣味の文具箱特別編集 『ラミー パーフェクトブック』

書名 ラミー パーフェクトブック
編者 趣味の文具箱
発行所 枻出版社
発行年月日 2019.05.30
価格(税別) 1,600円

● 池袋の東武百貨店7Fにある伊東屋池袋店に目の保養に来た。買う気はないけど,文具を色々見せてもらいましょう,と。
 銀座の本店よりも居心地がいい。ワンフロアだからだ。本店はちょっと窮屈さを感じるんですよ。

● 高級万年筆のショーケースを除いて,わりと丁寧に売場を見ていった。といっても,どこかで足を止めるというわけでもない。
 たとえば,かつては惹かれたシステム手帳にも興味がなくなった。現在でもシステム手帳のユーザーだし,今後もそうだと思うのだが,良くも悪くも使い方が固定(安定とも言う)しているので,商品自体に気を向けることはない。

● ところが,このムックを発見。サファリの今年の新色発売に合わせたものだろうか。前からあったのに気づかなかっただけ?
 1年前なら気にもとめなかったと思うのだが,今はサファリを6本所有するラミーユーザーになった。しかも,万年筆,ローラーボール,ボールペンとも,サファリは気に入っている(シャープペンは持っていない)。
 となれば,ラミーについて知りたくなるのが道理というもの。サファリ以外にどんな製品があるのかについては,You Tube の「えもちゃんねる」で大雑把には教えてもらっているが,あらためてじっくり確認しよう。
 というわけで,速攻で購入。いつも覗くだけの通行人では申しわけない。買う人になれてよかった。

● ラミーを知ったのは,ご多分にもれずラミー2000によってだった。はるかな昔の話。しかし,手を出すことはしなかった。愚かだった若い頃に(今でも愚かだけども)モンブランの万年筆やボールペン,シャープペンは買った。パーカーにもシェーファーにも手を出した。
 が,ラミーは視界を通り過ぎていっただけだった。そうこうするうちに,ワープロというものが登場し,ぼくはそちらに夢中になってゆき,手書きから離れてしまった。文具全般への興味も消えた。

● それからン十年。ロートルになってから,どういうわけだか手書きに復帰。パソコンに飽きたわけではまったくないけれども,どういうキッカケだったか。そもそもキッカケなんてあったのかどうか。
 ともあれ。そこからノートやペンを色々と買い漁る下品さに染まってしまって,現在に至る。

● ラミーについて言うと,上記のとおり,サファリをここ1年でいくつか手に入れた。万年筆を2本,ローラーボールを3本,ボルペンを1本。サファリ以外のラミーは持っていないし,サファリもこれ以上増やすつもりはない。
 万年筆のインクはプラチナのブルーブラックだし,ローラーボールのリフィルはジェットストリームやサラサに入れ替えているし,ボールペンもアクロインキに替えているから,それでラミーを使っていると言えるのかという疑問がなくもないが,インクをラミー純正のままにしている人はあまりいないだろうとも思う。

● ラミーに限らないのかもしれないのだが,欧州のメーカーはデザイナーの招聘にお金をかけているようだ。「形態は機能に従う」がラミーのデザイン哲学であるとか,バウハウスの影響とかが,解説されている。
 このあたりは研究書も出ている分野だろう。つまり,素人がこのこの気の利いた言葉を聞いてわかった気になっちゃいけないよ,と。

● 日本のメーカーは技術者の採用には熱心でも,製品デザインは社内のチームですませているところが多いのだろうか。和を以て貴しとなす,を標榜する結果,波紋を起こす存在を社に入れることに抵抗がある?
 たぶん,そういった薄っぺら理由からではないんだろうけれども,品質には秀でているのにブランドとして認知されないのが日本メーカーの弱みとは言えるかもしれない。薄利多売の激甚な競争には強くても,利幅の大きい高級品を作れない。
 高価格を納得させる形を生みだすのは,ぼくらが考えるほど簡単ではないんだろうけどね。

● 過去にラミーに注目したことがもう一回あった。リチャード・サッパーがデザインした dialog 1。買っときゃよかったよねぇ。フリマサイトに出ることがあるんだろうけど,けっこうな価格でね。さすがにそこまで出して買う気にはならないもんね,今さら。
 リチャード・サッパーといえば Think Pad のデザインも担当した。ぼくも長年 Think Pad のユーザーを続けているので,彼のデザインのどこかに惹かれているんだと思うんですよ。現行の Think Pad は彼のデザインからははみ出しているというか逸れているけれども。

● サファリについて,「なによりもニュートラルなモダンデザインが気に入っています。使っている姿を見た人に,何か違った印象を与えない安心感がとてもいい」と語っている人がいて,なるほどなぁと思った。
 この境地,見習いたい。これ見よがしにモンブランを取り出すバカにはなりたくないものね。

● 本書が刊行されたのは2019年。その年のサファリの限定カラーは,今年と同じピンク,ブルー,グリーン。
 色合いはもちろん同じではないけど。今年のは明るいパステル。2019年のはもう少しくすんだ感じ。イエローとマンゴーくらいの違いですかねぇ。

2023年6月17日土曜日

2023.06.17 堤 哲哉 『日本懐かしキャラノート大全』

書名 日本懐かしキャラノート大全
著者 堤 哲哉
発行所 辰巳出版
発行年月日 2021.04.25
価格(税別) 1,600円

● タイトルのとおりで,キャラノートを広汎に収集して,そこに考察というのか分析というのか,文章による短い解説を加えたもの。
 内容の大半はキャラノートの表紙の写真。

● ではあるのだけれども,フィールドワークを専らにする研究者による学術書を思わせるようなところがあって,いやこれは大変なことをやっている人だな,と思った。
 これだけ集めれば,そこから世相や時代の襞のようなものが見えてくるのではないか。著者を呼ぶには,コレクターよりはフィールドワーカーの方が相応しいと思う。

● 本書に載っているキャラノートのどれかをぼくは使ったことがあるだろうか。あるに違いないのだが,記憶にはまったく引っかかってこない。
 ひょっとしたら,ぼくは幼少のみぎりから真面目に勉強していた良い子ちゃんだったのだろうか。って,そんなはずはないのだが,キャラノートの記憶はない。しかし,間違いなく使っているはずだ。

● 少年時代をいつ頃過ごしたかによって,馴染みのキャラは違ってくる。ぼくは「少年マガジン」「少年キング」「少年サンデー」の1960年代の三大少年漫画週刊誌はその最盛期を知っているが,「少年ジャンプ」を読むようになったのは「ジャンプ」が創刊されてからだいぶ経った頃だ。大学生になってからだった。
 「少年画報」「ぼくら」「冒険王」「まんが王」といった月刊誌も読んでいたが,記憶は薄い。小学生の低学年だったか。

● それでも,本書に登場しているキャラの大半は知っている。雑誌で読んだり,テレビでアニメを見たり。「鉄腕アトム」や「鉄人28号」は再放送も含めて何度も見た記憶がある。
 「のらくろ」はさすがに知らないのだが,「忍者部隊月光」や「赤胴鈴之助」,「怪傑ハリマオ」,「遊星王子」あたりもカバーしている。「巨人の星」や「あしたのジョー」は言うまでもない。
 「マーガレット」や「少女フレンド」「りぼん」などで少女漫画もわりと読んでいる。「アタックNO.1」は当然として,「リボンの騎士」も「魔女っ子メグちゃん」もアニメを見ている。

● というわけで,本書を見ながら色々と思い出すところがあった。年寄りには懐かしさ満載。これは立派な研究にもなり得るテーマだと思うのだが,それ以上にロートルにとっては堪えられないエンタメでもある。