結論は,今までと変わらない。国内メーカーの鉛筆削りのほとんどは国産の刃を搭載していない。中華製の刃を使っている。だからこそ,カニエの刃の需要がなく,カニエが廃業に至ったわけだ。
● そうなると,鉄道の廃線が決まった後と同じように,中華製の刃の鉛筆削りしか使ったことのない有象無象がカニエを惜しむフリを始めることになる。乗ったことのない輩が廃線を惜しんで最後の運行車両に蝟集するのと同じ。
本当にそう思うなら普段から乗ってろよ,ということだ。遠くに住んでるから乗ることはできないんだよ,ということなら,惜しむフリをする資格もないじゃないか,と鼻白むしかないわけよね。
● 実際のところは,中華製の刃であっても,刃がダメになったので鉛筆削りが使えなくなったなんてことはほぼほぼないんじゃないか,と思う。電動であれハンドル式であれ。
樹脂製筐体が破損して使えなくなることの方が多いんじゃないかね。
実際,カニエの国産刃を採用している鉛筆削りは,カール事務器の「エンゼル5」くらいのものだ。「エンゼル5」は筐体もハンドルも金属製で,衝撃にも強く,耐用年数も長い。カニエ刃を採用するに相応しい。
● 問題は「エンゼル5」がそんなに売れていないことだ。その理由を長々と語っても仕方がないが,「エンゼル5」が大人仕様であることだろう。
「エンゼル5」で削ると鉛筆に歯型が付くが,それも “女子供” は嫌うかもしれない。“大人の男” 仕様なのだな。
しかしながら,“大人の男” は鉛筆を使わない。使う人もいるが,メーカーからすればゴミ程度のものだろう。
● 鉛筆削りのメインユーザーは小中学生。彼らの多くも10年程度しか鉛筆を使わない。鉛筆削りは10年保てば一生モノだ。10年でいいなら,中華製だからといって性能に問題はない。
無印良品の千円のやつ1台で足りちゃうんだな。中華製の刃であっても,たいていの機械式鉛筆削りは一生モノたりうる。
● 鉛筆削りは鉛筆の補助具だから,シッカリした鉛筆削りを使ってもらうには,鉛筆の需要を増やすのが一番だ。しかし,その処方箋を書くことは誰にもできない。
“鉛筆の需要を増やす=シャープペンやボールペンの需要を削る” でもあるからだ。
● 国民総筆記量(GNW?:Gloss National amount of Writing)は増えないだろう。手書きでの筆記量は増えないはずだ。パソコンやスマホで書くのを含めれば,だいぶ増えていると思うが。
筆記具間でのゼロサムゲームになる。とすれば,三菱やトンボが鉛筆の需要創造に本気になることはない。利幅の少ない商品のために利幅の大きい商品を犠牲にすることになるわけだから。
● 文字どおりの “一生モノ” など求められていない,というのが見えない実態でもあろうと思う。
将来の自分は現在の自分の延長線上にはいないかもしれないと,誰もが薄々と思っている。身長や体重だけでなく,ライフスタイルも変化して行く。“一生モノ” はその変化の足を引っぱる。
鉛筆削りなど些々やかなものだが,“一生モノ” である必要はないと考える人が多いのではあるまいか。
● ともあれ。カニエの歯車・刃はカール事務器が引継ぐことになったようだ。技術は継承される。
元々,ニッチな製品だ。𝕏 の文具界隈民の間でこそ話題になっているが,気にもかけない人が大半だろう。であればこそ,ニッチ界では安堵の声に満ちている。
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