2019年4月17日水曜日

2019.04.17 舘神龍彦 『手帳と日本人』

書名 手帳と日本人
著者 舘神龍彦
発行所 NHK生活新書
発行年月日 2018.12.10
価格(税別) 780円

● 手帳を切口にした日本近現代史。現代史の部分が詳しい。サラリと読める読み物。

● 日本は世界に冠たる手帳大国だという。たぶん,日記大国でもあるのではないか。手帳も予定管理よりもログ(記録)を残すために使っている割合が高そうだ。“手帳をつける” という言い方もあるくらいだ。
 「ほぼ日手帳」に代表される1日1ページタイプは予定管理のためにはかえって使いづらい。それがこれほど使われているのは,ログ好きが多いということだろう。日本人って面白いよな。

● 以下にいくつか転載。

 (福沢諭吉が持ち帰った)この手帳は小型ノートにすぎないが,明治一二年に旧大蔵省が発行した「懐中日記」は,予定記入欄や便覧を備えている点で手帳の起源と言える。(p4)
 最初期の手帳は為政者から与えられるもので,その底流にあったのは「発行元の共同体の時間」ではなかったか。(p6)
 グーグルのテクノロジーがもたらす時間感覚は,ある種中世ヨーロッパの時間感覚への先祖返り的な構造を持っているのではないか。また,そのことに無意識に窮屈さを感じ取った結果,少なくない人々が紙の手帳に戻っているのではないか。(p7)
 当時の人々にとって,鉄道の開通は新たな時間感覚を身につけるきっかけとなった。日本人が時間を内面化するようになったのは,このころのことである。(p24)
 手帳は「慣れ」の比重が大きい。サイズや便覧,デザインと同じくらい,記入欄のフォーマットが重要だ。そうでなければ,使い勝手は極端に悪くなる。(p77)
 終身雇用制の企業に勤めるビジネスマンにとって,時間はその中で生きるための「いれもの」でしかなかった。(p79)
 一〇年ほど前から,ロフトや東急ハンズといった大手量販店では,通年で手帳売り場が設けられるようになったが,まさに百花繚乱というべき様相を呈している。これほど市場が成熟した国は,おそらく世界を見渡してみても日本だけだと思われる。見本はまごうかたなき「手帳大国」なのである。(p134)
 手帳術の指南書は,具体的な事例をもって手帳活用法を解説してくれる存在だ。ただし,それはそれで参考にしつつ,自分にフィットしたやり方を見つければいい。手帳に限らず言えることだが,トライアンドエラーのなかで,つまり実行して初めて得られる知見が重要だ。(p144)
 かつては午後三時を過ぎると銀行は閉まっていたが,インターネットならば二四時間対応だ。個々人が「いつでもできる」ということは,社会で時間を共有する機会は減ったということだ。(p171)

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