2022年4月23日土曜日

2022.04.23 福島槙子 『文房具の整理術』

書名 文房具の整理術
著者 福島槙子
発行所 玄光社
発行年月日 2020.09.30
価格(税別) 2,000円

● 副題は「使いやすいものがすぐに見つかる」。が,整理術の具体が説かれているわけではない。整理してすべての文具に所を得さしめよという一般論が書いてあって,整理された状態の抽斗の写真(リアリティはあまりない)が載っているだけだ。
 本書の大部分(遠慮した言い方をしても,過半)は収納文具のカタログだ。カタログを2,000円出して買うのも,何やら業腹ではある。

● いくつか転載。
 私にとって,文房具は生活に必要な実用品でありながら,同時に大切な宝物であり,そこにあるだけで幸せな気持ちにしてくれる存在です。(p3)
 文房具は,目的を達成する道具であり実用品です。そういったものは必要に応じて最低限もつことが美学である,という考えもあります。(中略)本当にそうでしょうか。(中略)私は,この “実用品” という言葉に,文房具に対しマイナスの感情を抱く原因があると思っています。(中略)文房具は機能だけではなく,手触りや色,デザインを楽しむ道具に進化しているのだと思います。(p25)
● ぼくは,必要なものを最低限しか持たないことによって生活の美は生まれてくると思っている。ヨーロッパの宮殿や東照宮の陽明門のように,過剰が生む美はもちろんあるのだけれども,生活の美はそういうものとは異なる。
 文房具に限らず,好きなもの,欲しいものを,好きだから,欲しいからという理由で,好きなだけ,欲しいだけ手に入れてしまうことからは,美は生まれない。それで生まれるのはノイズだけだ。

● “好きなだけ買え” は売る側の理屈だ。それにしたがってしまうと安っぽいデコラティブに支配された,とりとめのない,ありていに言うと汚い生活になってしまう。
 整理されていないからではない。整理したとしても同じことだ。

● 美の根底には緊張感がある。飾ってはいけない,を原則にしているのでないと,ピンと張りつめた美は出て来ないような気がする。
 不適切なデコレーションは品を下げる。デコラティブを拒否するストイックさがなければならない。

● 野放図に手に入れるよりも必要最低限に抑える方が難しい。その難しいことに挑戦しないと美に近づけない。
 ぼくらの審美眼は緩すぎてフィルターにならないのだ。だから,必要最低限を意識することが,生活の美から遠ざからないですむ唯一の方法になる。

● 文房具はとにかく安い。高級な万年筆といっても,世に知られた稀覯品は4桁の万かそれ以上になるものもあるのだろうが,普通の世界の話に限定すれば,せいぜい30万円だろう。ぼくらが使っているのは数万円どまりだろう。
 普段使いするのは100円のボールペンだったりする。国産の100円ボールペンが頗るつきの書きやすさと来ているから,新製品が出るたびに次から次へと買ってしまうのだけれども,それをやってしまうと樹脂の集合体になってしまうのだ。樹脂の集合体が美を生むことはない。

● 文房具は紛う方なき実用品であって,実用品は使われていてこそ美を宿す。使われない実用品は朽ちる。
 かのストラディバリウスの名品といえども,使われないまま放置されたヴァイオリンは命をなくす。

● 文房具にコレクションは馴染まない。少なく買ってテンポよく使う。これと思ったボールペンを1本買ったら,壊れて使えなくなるまで次は買わない。
 ぼくはそうありたいと思っている。問題はたった1つ。思ってもまったく実行できていないことだ。

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