2023年1月9日月曜日

2023.01.09 ハヤテノコウジ 『スケッチジャーナル』

書名 スケッチジャーナル
著者 ハヤテノコウジ
発行所 G.B.
発行年月日 2021.06.28
価格(税別) 1,800円

● 副題は「自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート」。タイトルのスケッチジャーナルとは何か。絵日記のようなものだと思えばいいだろうか。
 絵日記といえば小学校の夏休みの宿題と相場が決まっているが,なんであんなものを宿題にしてたんだろうかねぇ。わざわざ絵を嫌いな子供を作っていたようなものだ。
 読書感想文ではよく言われるが,絵日記でこれを言う人がいないのは不思議だ。小学生に宿題を出すのは有害だ。それで絵を描くことが嫌いになったと強弁するつもりはないけど。

● 絵を描けないことにまぁまぁ劣等感は持っている。この本でも最初にそこに触れている。自分には絵心がないからと尻込みする人に向けてのメッセージだ。この本の目的は描く人を増やすことだろうからね。
 描くことにまるで興味がない人がこの本を手に取ることはないだろうから,情報というものは届け手が届けたいと思う人には届かないものだというのは,厳しく貫徹されるわけだけれどもね。

● 上手じゃないといけないと思いこんでいるのがいけないのかね。絵を描くのに絵心など必要ないと決めてしまえばいいのかもしれない。
 3歳の幼児だった書いてるんだから。ぼくもその年齢のときには,庭をキャンバスにして棒で何かを描いていたと思いますよ。

● 本当に絵を描きたいと思っているのかってことが肝心。ぼくはどうやらそこまでは思っていないようなんですよね。憧れはあって,絵を描く人ってすごいと思うんだけども,自分もそうなりたいという強烈な思いはどうやら持っていない。
 本書を読んであらためてそう思った。縁なき衆生のひとり。すまんス。

● 以下に転載。
 僕にとって絵は「記録する手段」のひとつでしかなく,そこに好きも嫌いもない。実際,ビジュアルは文字情報よりも数倍,記憶の再現性が高まると言われる。だからこそビジュアルで表現し,いかにその日の記憶をわかやすく残すかにかかっているのだ。(p28)
 誰かの評価を得ることを第一にすると,「他人の目を気にし,共感されやすい絵を描く」ことにも繋がりかねない。(p28)
 自分らしい絵を描くための第一歩は,ペンを使って手を動かし,線を描くことからだ。(中略)作品を継続的に生み出すには線を描いて,それぞれの先の特徴を理解することが大切だ。(p40)
 スケッチをするために対象を観察するようになると,世の中のあらゆる存在には,実にいろいろな形があることに気が付く。(p43)
 自分の手で立体物を作ると,面だけではわからなかった幅・高さ・奥行きを実感できる。絵を描く際もこの3つの情報を捉え,影の存在や対象の裏側まで意識することで上達したように感じるはずだ。(p44)
 僕は最初,道具に頼らず自力ですべて書くことにこだわっていた。しかし,ある伝統工芸の職人さんが道具を活用し,品質にこだわりつつ効率性と再現性の向上に取り組む様子を見て,自分も使えるものはどんどん取り入れようと思い直した。(p45)
 色鉛筆で色を塗る時は,対象を一つひとつ塗って完成させるよりも,同じ色ごとにまとめて塗るほうがスムーズだ。(p49)
 「似顔絵」と言うと難しそうに感じるかもしれないが,要は顔のパーツをレイアウトする作業。(p55)
 『千住博の美術の授業 絵を描く悦び』(千住博著 光文社刊)には,次のように記されている。「絵を描くということは,自分にないものを付け加えていくことではなくて,自分にあるものを見つけて磨いていくことです。(中略)」(11ページ引用) ぼくはこの一文を読んでから,「他人を比べてその差に落ち込み,誰かの活躍をうらやましく思っている場合ではない。自分にとことん集中して,自分が持つ価値を引き出そう」と考えるようになった。(p67)
 「絵を描きたい」という気持ちがあるのならば,既に絵心に満たされている状態だ。(p68)
 創作に限らず,成長する過程では3つの要素が自分の前に立ちはだかる。最初に現れるのは,「問題」という壁。次に,それを飛び越えようとして起こる「失敗」。そして,失敗の原因となる自分の「弱点」だ。(中略)また新たな「問題」がやって来る。そして「失敗」して「弱点」を乗り越えて,といったサイクルを繰り返していくのだ。一方で,「美しく,きれいに描きたい」と考え,完璧にやろうとする人は失敗が許せず,この成長のサイクルに入ることができない。(p70)
 使い込んだ手帳やノートは,自分にとってもそれを見る人にとっても魅力的な存在だ。作者がたくさんの時間を費やし,思いを込めて作った世界でひとつだけの作品なのだから。決死絵,美しくきれいに仕上げた作品だから魅力的なのではない。(p70)
 道具を手に入れたことで生まれる創作のモチベーションはあなどれない。(p73)
 あるイラストレーターの可愛いタッチが気になるなら「なぜ,可愛いと感じるのか」を意識し,描き方を研究しながら模写する。理由を考えながらたくさん描いていくうちに,「可愛い絵の在り方」を自分なりに導き出すことができるだろう。(p127)
 オリジナルは,決してゼロから生まれるものではない。あなたの憧れの人だって誰かの影響を受け,意識的に,あるいは無意識的にインプットしている。影響とは,憧れの人から受け継ぐ創作のエネルギーのようなものだ。(p127)
 描けなくなった時,僕は「成長の自動化プログラムが働いている」と捉えて無理に続けようとはせず,「描かない」ことに意味を見出すようにしている。(p130)
 僕は自宅で描くのなら,深夜の1時から早朝の6時くらいまでが,一番好きな創作タイムだ。(中略)時間を気にしないで,飽きるか疲れるまでただひたすら描いていたい。(p133)
 僕のスケッチジャーナルの作業を時間配分すると,計画が6割,材料集めが2割,制作が2割となっている。(p143)
 スケッチジャーナルは他人のために作るものではない。読者である自分を満足させることに集中しよう。(p147)
 クリエイターになる過程では,自己満足から脱却しなければならない時が来る。(中略)スケッチジャーナルは「自分の機嫌を良くするために作る」という明確な理由があったが,クリエイターとしてのあなたの活動目的はなんだろうか。(中略)明確な動機付けが,クリエイターになるための第一歩だ。(p185)
 水彩画やアクリル画のように下書きをせず,北京で撮った写真をもとにドローイングペンで一気に描き上げるスタイル。この時,現地の情景が一気に蘇り,過去の体験をもう一度味わうような楽しさを覚えた。(p203)
 会社員業が忙しくなると,イラストレーター業も活発になる。つまり,「成長と拡大のチャンスの波はまとめてやって来る」ということ,その波に備えておく重要性,決して運気を逃さないという強い気持ちを,当時の体験とともに今でも忘れていない。(p208)
 「いつもの自分の字を,どんな紙にも書いていく」ことが理想ですね。文具が持つ価値に合わせるのではなく,主体はあくまで自分。文具は手段であり,自分に従ってもらうという主従の関係だと考えると,使い方が自由になりました。(土橋正 p221)

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