2019年7月10日水曜日

2019.07.10 加藤昌治 『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』

書名 アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編
著者 加藤昌治
発行所 CCCメディアハウス
発行年月日 2017.03.13
価格(税別) 1,500円

● 「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」であるが,その場合,既存の要素と組み合わせ方(発想の技法)のどちらが大事かというと,既存の要素の方。これをどうやって集めてくるか。
 自分の仕事はアイデアなど関係ないという人が大半かと思うけれど,読み物としても面白い。

● 以下に転載。

 プロフェッショナルな仕事って,スポーツの世界に喩えるなら,リーグ戦を戦っていくようなものではないかと思います。トーナメント戦ではなくてリーグ戦。(中略)要は勝ったり負けたりがあるなかで,全体としての勝率をどうやって高めていくか,の競争なわけです。(中略)勝った負けたもあるけれど,前提として試合数の多さを確保したいのです。(p16)
 よきアイデアは,価値を創造できます。関係する人間の数が多ければ大きな価値になるし,少なければ小さな価値。でも大小だけが問題でしょうか。(p18)
 必要なのは小手先のアイデア発想術を身につけることではありません。基本となるカラダとアタマの動かし方を無意識にできてしまうまで覚えることです。考える,というスポーツに固有のカラダとアタマの動かし方を知る。知るだけじゃなくて体得する。(p19)
 アイデアの練習は簡単なんです! なぜか。アイデアのヒント,源泉は生活の中にあるからです。というか生活の中にしかない。だから机に向かってウンウンうなるのではなくて,街に出て行くこと,誰かと何か楽しいことをして,ワクワクした気持ちを感じていることが即練習です。(p22)
 教え上手なセンセイとは,同じ動きを幾通りにも説明し分けられる人のことじゃないでしょうか。(p25)
 カラダの練習は,自分が思っている以上に,2段階ぐらいオーバーにやってみるのが実は丁度いいみたいですね。(中略)一度やり過ぎてみたからこそ,適正値が分かるというところでしょうか。(p25)
 いちばん早くて簡単な練習法は,選択肢を二つ以上出す,です。(p29)
 考えるとは「選ぶ」ことだ,ということです。この構造を知っておいてください。とても重要です。(p34)
 お題が何であろうと,できるだけ大量の選択肢を出すのがお約束です。質も求められますけれども,まずは量,それから幅です。(中略)アイデアとは選択肢のことだと考えています。(p35)
 わがまま→思いやり。この順番,もう絶対の“鉄の掟”だと思ってます。(中略)じゃあわがままってどういうこと?(中略)自分の気持ちや理想に素直になること。(中略)ところが,多くの人はここで固まります。わがままになり切れません。通り一遍のコトですまそうとしてしまったり,過去の事例に頼ったり。(p41)
 アイデアは天から啓示を受けるものではありません。単なる(とあえていいますよ),単なる組み合わせにしか過ぎません。突拍子もないアイデアとは,組み合わせ方が意外,あるいは組み合わせた素材に新鮮さがあっただけなのです。(p45)
 既存の要素をどこからか見つけてきて,それらをどうやって組み合わせるのか,だけ。さて,どちらが重要だと思いますか?(中略)より重要なのは既存の要素だとわたしは思っています。それもプロフェッショナルになればなるほど。(p58)
 実際には一つの言葉=既存の要素がキッカケになって,止まらないほどにアイデアが湧き出てくることがあります。(p59)
 分からないこと,分かりにくいことは分けるのが,物事を理解するための王道アプローチです。(p62)
 何らかの方法で体験は増やしていきたい。使う時間とお金は同じでもかまいません。ただ「いつもの場所でいつもの・・・・・・」はできるだけ避けたい。(中略)もちろん一つのネタ(既存の要素)は二度三度と活用したい。遠慮は不要です。(p63)
 忘れてしまわないようにしっかりメモっておくべきですね。写真もメモの一つ。迷ったら撮っておくのが吉じゃないでしょうか。(p67)
 間接的な体験も実は捨てたものではありません。メリットの一つが事案と空間を軽々と超えられること。(中略)もう一つ,間接体験のありがたさは,自分以外の視点から物事を見られる(見直せる)ことじゃないでしょうか。(中略)ついでいいえば,間接体験ってコスト安,しかも格安です。(p70)
 マスメディアに掲載されている情報は,世の中の共通項でもあるわけです。世の中に通用するアイデアって,ある程度社会との共有度を持っていることが必要になってきます。誰も知らないことには反応できないからです。(p75)
 アイデア初心者は,昨日見た自分にとって新鮮だった体験をそのままアイデアだとしてしまいがちです。土曜日に家族で行ってきたサーカスが面白かったから,次のイベントはサーカスやりましょうよ,みたいなパターンですね。(中略)ベテランは少々違います。感動したサーカスを触媒にして,すでに自分の中に蓄積されていた既存の要素を呼び起こす作業を(ほとんど自動的に)やっているはずです。(p77)
 一回でも会場大興奮!のライブに参加したことのある人は,まったく別のライブDVDを自宅で見るという間接体験をしたときに,会場のリアリティや興奮度合いを擬似的にではありますが共有できます。(p89)
 1冊の本の裏には,驚くほどのボリュームの知識と体験とが凝縮されてます。果汁500%ジュースみたいなんですね,本って。(中略)ただし,(中略)本としてまとまっているとどういうわけか書いてある内容に間違いはないように思いがちですが,誤りも結構あります。(中略)全体把握が「押さえる」の目的ですから,情報源はある程度分散させておきましょう。(p129)
 一般的,でいいんです。普通の生活の中にこそアイデアへのヒントがあります。特殊な「遊び」は不要です。超高感度のアンテナも不要です。普通の中に,抱えきれないほどのネタがあります。(中略)毎日を精一杯楽しく充実して生きることもアイデアパーソンのお仕事です。(p151)
 大切なのは,選択肢としてのアイデアを考えるだけの時間とそれを選ぶ時間,さらに選ばれたアイデアを具体的な企画に詰めていく時間を物理的に分割することです。同時並行はやめたほうがいいです。ロクなことになりません。(p157)
 アイデアは,ある一つを出発点にしていかようにも広がり,変化していく性質を持っています。いま捨てようとしている,その一案から化け物のようなスゴい案が派生するかもしれません。最初の一案を捨てることは,そこから始まるすべての可能性そのものを捨ててしまうことなのです。(p160)
 書くではなくて「描く」。罫線のような“ガイドライン”なんて無視してください。もっと自由に,思うがままに。何度でもいいますが「わがまま」にやるのがアイデア,の段階です。アイデアは描くもの、。スケッチするものなんです。だから大きな字に小さな字,漢字にカタカナ,もちろんポンチ絵が入っていても全然OK。逆に文字だけであっても立派なスケッチです。(p164)
 アイデアをメモったり,スケッチしてくときにぜひ留意して欲しいことがあります。それは,ほんのわずかな違いでも,その相違点は別アイデアになっているのですからそのまま残しておく,ということです。(p167)
 アイデアを出すときには,抽象度を挙げない。あえて固有名詞など具体的な表記を使ってみてください。ちょっとの違いを尊重することがアイデア量産のヒケツです。(p169)
 人間国宝であった歌舞伎俳優・四代目中村雀右衛門丈から「女形は極めて人工的に作り出された発明品」と伺ったことがあります。まさに至言。その当人じゃないほうが,より深く理解し表現することができるという考え方なのでしょう。(p201)

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