2019年7月26日金曜日

2019.07.26 伊東道風 『万年筆バイブル』

書名 万年筆バイブル
著者 伊東道風
発行所 講談社選書メチエ
発行年月日 2019.04.10
価格(税別) 1,500円

● わかりやすくて おもしろくて 役に立つ。さすが,伊東屋。

● 以下にいくつか転載。

 書くスピード速い方も,ペン先が硬いほうがあっています。ペン先が柔らかいと,しなるわけですが,しなる分だけ,書くスピードが遅くなるからです。(p28)
 ペン先のサイズ,つまりは字幅によっても書き味が変わります。字幅が狭いほど,つまりペン先が細くなればなるほど,先端にかかる摩擦力は大きくなるので,滑らかな感覚が低くなる。(p29)
 インクの流れを抑えるという設計思想でつくられているプラチナのブルーブラック・インクは,界面活性剤を使っていません。(p55)
 プラチナは,文字の滲みを避けるという設計思想がありますので,インクの粘度や表面張力を上げて,浸透率を低くしています。(p55)
 日本人には,技術というのは「均一性」を達成するためのものと考えているところがあります。(中略)それを達成する道具として,機械を導入してします。ところがヨーロッパでは万年筆を評価するにあたって,この「均一性」というものにはあまり重きを置いていないように思われます。ヨーロッパにおける万年筆の一番の評価のポイントは,「ハンドメイド」ということにあり,日本であれば機械で均一につくっているような部位も人間の手で行うことを重視しています。(p139)
 欧米では鉛筆は文房具ではなく,画材扱いされています。(p143)
 ユーザーの中には,万年筆を使っていくうちに自分の分身のように思えてくる方はたくさんいらっしゃいます。修理ができなければ,その方は自分の分身を失うことになります。(p144)
 概してヨーロッパの万年筆メーカーの装飾技術,宝飾彫金の技術は,日本の技術を凌駕しています。真に繊細で精密なものを求める場合は,均一性を求める日本的な技術よりも,ハンドメイドであることに重きを置き,一個一個に質と個性を求めるヨーロッパ的な技術のほうが,どうやら有効のようです。(p169)
 カランダッシュ社,エス・テー・デュポンには,欧州で根強い愛好者がいます。日本と違い,貴族文化の土壌があるヨーロッパには,真の意味で「良家の資産家」と呼べる人たちがいますが,本物の上流階級の人々は,ステイタスシンボルとなるようなブランド品よりも純粋に,「いいもの」「本物」だけを求めます。この二社は,まさにそういった人たちの目に敵ったものづくりをしているメーカーなのです。(p170)

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