使いかけの鉛筆から使っていくという,自分で作ってしまった窮屈な規則に縛られて,この理想郷に入るのはしばらく先になる。が,時々は先行して理想郷を体験している。
● クラフツマンは,文字どおり,字を書く用ではないのだろう。
字を書いていると,かすかに粘っこい感じがする。
● 9500はトンボ8900や三菱9800の並び。最も競争が激しく,大手の評価が確立している価格帯。
が,北星9500は,硬度が他社より軟らかめだからか,頭ひとつ抜けているという印象を持つ。ぼくが軟らかめが好きだからなんだが。
鉛筆だから試し書きをしてから買うものではないが,使ってもらえばわかる。利益は出ているのかと要らぬ心配もしたくなる。
● しかし。字を書くだけの人間には9606が秀逸。芯もなかなか減らない。トンボ2558も良くできているが,9606がわずかに勝る。消しゴムを付けて77円とは恐れ入る。
ただし,鉛筆は鉛筆であればいいのであって,消しゴムのことは消しゴムに任せよ。つまり,消しゴムは付いてない方がいい。が,逆の意見の持ち主も多いだろう。
● そういうことはどうでも,字を書くなら北星9606が決定版だと断言してしまいたい。
文具民界隈には,筆記具を使うために書(描)くという倒錯が跋扈している。悪いとは思わぬが,参考書や勉強法にやたら詳しいのに勉強はからっきしできない受験生みたいだな,とは思う。
● 9606が決定版なのだから,これ以上の鉛筆探しはスッパリ止めて,9606で書くことに専念せよ。鉛筆を使うことが目的ではないだろう。アウトプットの質量を高めることが眼目のはずではないか。
以上,自分に言ってますからね。アナタに言ってるんじゃないですよ。
● いやね,測量野帳と9606があれば,天下に敵なしですよ。測量野帳と9606があるところが宇宙の中心。宇宙の中心にいるのだから,有象無象はどうでもいいんですよ。
かつ,測量野帳と9606は持ち歩けるわけでね。自分がどこにいようと,自分のいるところが常に宇宙の中心というわけですよ。
(追記 2024.11.15)
● この3本を何度も使っているうちに当初の感想と違ってきたので,上述の一部を訂正したい。
クラフツマンについて「字を書いていると,かすかに粘っこい感じがする」と述べたのだが,そんなことはない。いたってスムーズで滑らかで軽い。今となっては,なぜ粘っこいと感じたのかすらわからない。
● 書き味も9606を上回っている。9606にはわずかにザラつきがあるが,クラフツマンには皆無。
やっぱり,値段の順かな。文字しか書かないぼくのような人間にも,クラフツマンを使う贅沢は許してやりたい。
● ただね。9606で不満は1㎜もない。わずかなザラつきが気持ちいい。
9500はもっとザラつく。しかし,やはり充分に滑らかで,そのザラつきはBGMのようなものだ。許容範囲にある。
● こうしてみると,何が何でもこの1本とは決められない。「弘法筆を選ばず」が成立するかどうかは,環境による。鉛筆環境はそれが成立つだけの水準に到達しているように思われる。
世の達人たちはそれでも細かい差異に注目して,それぞれの好みを開陳するが,当人の使用目的によって色々なのだろうと考える他はない。
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