書名 私の好きな文房具の秘密
著者 菅 未里
発行所 枻出版社
発行年月日 2019.04.30
価格(税別) 1,600円
● いくつか合点がいったことがある。コクヨのCampusは1975年に発売されたのか。ぼくが大学生になった年だ。ルーズリーフ派だったから,Campusを使った記憶がないのは当然だったのだ。
修正テープはプラスとトンボが有名らしい。ぺんてる製品が好きで使っていた時期がある。主には仕事でだが。
● 以下にいくつか転載しておく。
「なぜホッチキスはこんなに大量に売れるのか」ということ。(中略)マックス製のハンディホッチキスだけで2018年時点で計5億台売れているのですが,これは異様な数ではないでしょうか。(中略)日本の世帯数は5000万強,企業数は500万弱なので,平均して考えると,一家・一社に何台ものホッチキスがあることになります。ホッチキスは消耗品ではないし,まず壊れません。50年前のホッチキスが現役である例もあるくらいです。それに,ある程度大きいので紛失しにくいし,持ち歩くこともそうはありません。(p48)
これ,ホチキスだけの不思議じゃないよね。ハサミやステープラー,ケータイの充電器など,すべて同じ不思議に満ちているのではないか。
日本製のすぐれた製品は,文房具も含め,たくさんある。だが,日本人がゼロから新しいものを作り出し,世界中に受け入れられた例はあまり多くはないだろう。カッターナイフは,日本人の物作り史に残る偉大な例外なのだ。(p58)
ぺんてるによると,そもそもの位置づけが日本と外国とでは異なるそうです。日本におけるサインペンは筆記具ですが,海外では「色をつけるためのペン」という側面が強いというのです。したがって,海外では日本よりも多様な色展開が求められます。(p90)
(ジェットストリームの)成功のポイントが,感覚的に語られがちだった「インクのなめらかさ」を市川(秀寿)氏がきちんと定義した点にあることはあまり語られていません。(中略)インクには,「軽い/重い」とは別に,「なめらか(柔らかい)/硬い」という評価軸もあり,軽さだけを追求すると硬くなりがちです。市川氏は早くからこのことに気づき,軽さとは別になめらかさも追求していたのでした。(p118)
特に人気だったのが,表紙に欧米の有名大学のキャンパス風景の写真を配した「世界の学府シリーズ」で,若者たちに支持され大ヒットした。(中略)1965年の大学進学率は2割以下。大学生はエリートであり,欧米は憧れだった。「欧米のキャンパス」というのは,二重の意味で価値を持っていたのだろう。(p125)
コクヨがここまで罫線にこだわるのは,半数以上のユーザーがノートを分割して使っていることを調査で知ったからだ。細かなガイドは,ユーザーに寄り添う姿勢の表れでもある。(p129)
元文房具の販売員としての私から見ると,キャンパスノートのデザインの特徴は,おそらく店頭での視認性も意識しています。(p132)
私が本書のために,多くのメーカーの取材をして気づいたのは,文房具の開発の過程で「偶然」がはたした役割の大きさです。最初から計画通りに開発できた文房具は,ひとつもないと言っても過言ではありません。(p188)