2020年10月27日火曜日

2020.10.27 手帳をネタにした貧困ビジネス

● 某書店の手帳売場。

 夢をカタチにする 未来手帳
 書けば自然にみがかれる いい女Diary
 週末野心手帳 やりたいことが叶って,毎日ときめく
 願いを叶える手帳
 お金が貯まる 金の手帳
 魔法の手帳
 愛と感謝が幸せを呼び込む 引き寄せスケジュールブック

 といった手帳がまとめられた売場がある。女性に囁きかけている。女は男より欲が深い。売る方もよくわかっている。

● 書くという行為自体に魔術的な意味を籠めやすいのかもしれないね。書くという行為には呪の力がある,といった方向に傾かせるものがある。
 そちらに傾きがちな人は,たとえば安倍晴明の陰陽道の話なんかが大好きだったりするんだろうかね。

● 佐久間英彰『速攻で仕事をする人の手帳のワザ』に次のような文章がある。
 手帳評論家の館神龍彦さんが,有名人の名前を冠する手帳を「神社系」と定義しました。ありがたがって拝む姿から神社系とはうまく名づけたものです。しかしその手の手帳は,有名人の知名度に拠って買わせるビジネスモデルだと,早く気づいたほうがいいでしょう。(p144)
● 「神社系」とはたしかに巧いネーミングだが,「有名人の名前を冠する手帳」というよりも,こうすれば夢が叶う,お金が貯まる,と謳っている手帳のことを指すものだと捉え直した方がいいだろう。
 実際,手帳で夢が叶うと思って買う人がいる。需要があるから供給があるわけだから。
 ただ,手帳で夢が叶うと考える人は,知的な人とは言いにくいことが多いだろう。

● ありていに申すと,これは手帳を使った貧困ビジネスではないか。
 喰いものにされているのは主には知的貧困者だが,そのかなりの部分は経済的貧困者と重なるだろう(たぶん)。

● 藤沢優月「夢をかなえる人の手帳」(ディスカヴァー21)あたりが嚆矢となるだろうか。今年で19年目を迎えるらしい。累計で170万部売れている。
 こういうのも印税方式で著者にお金が入るのだとすると,この19年間で3億円近い収入を著者にもたらしている計算になる。
 延べ170万人の貧困者が著者に3億円を貢いでいるというわけだ。170万人の貧困者より著者の方がやっぱり賢い。

● バカどもよ,いい加減に目を覚ませ。それを佐久間さんは「有名人の知名度に拠って買わせるビジネスモデルだと,早く気づいたほうがいいでしょう」と婉曲に表現しているわけだ。
 しかし,世にバカが尽きることはない。努力抜きで金持ちになれる,楽して夢を叶えられる,と思っているバカは人類が滅亡するまで存在しているだろう。
 ゆえに,「神社系」手帳は手を変え品を変えて,次々に登場する。であるなら,自分も「神社系」を出す側に回れるように努力してみたらどうか。

● しかし,そうした手帳でも手帳として使えないかと言ったら,まったくそんなことはない。通常の手帳として充分に使用可能だ。
 じつは,価格も他の手帳と同じようなものだ。バカが買ってくれるからたくさん売れるというだけだ。それが大きいわけだが。

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