● トラベラーズノートの言う,旅するように日常を生きるというとき,どうしたらそれができるか。
松尾芭蕉『おくのほそ道』の冒頭,「月日は百代の過客にして,行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯をうかべ,馬の口とらへて老いをむかふるものは,日々旅にして,旅を栖とす」は,まったくもって滋味掬すべきものであろうけれども,この部分を毎朝,音読したとしても,旅するように日常を生きることはできないでしょ。
● 旅=トラベル≒トラブル,であって,旅するように日常を生きる≠楽しい,というのは基本テーゼとして頭に入れておいたうえで,ではどうすれば旅するように日常を生きることができるか。
形から入るしかないよね。形というか,具体的な行為から入ってみること。つまり,旅行中にやっていること,旅行中にしかしないことを,日常に持ち込めばいいのだ。
● では,日常ではあまりやらないが旅行中にはやることとは何か,といえば,2つある。
1つは写真を撮ることだ。今ではSNSがあるので,やたらに写真を撮るようになってはいる。一個人が撮る写真は,デジカメがあたりまえになる前の平成10年頃と比べれば,少なくとも100倍にはなっているのではないか。
したがって,これはもう多くの人がやっていることだ。SNSを始めると旅するように日常を生きられるようになるかどうかはわからないが,SNSがその契機を作っているとは言ってもいいと思う。
● もう1つは,チケットや切符を捨てないで,ノートやアルバムに貼って保存しておくことだ。現地のショップカードや絵葉書,お菓子の包装紙なんかも「貼る」対象になる。
だから,日常でもそうした「貼る」をやるようにするといい。日常のありふれた,何でもない光景を切り取る感覚だ。
切り取る価値があるかないかは考えないでおく。スーパーで買ってきた調味料の商品シールを剥がしてノート(or手帳)に貼っておく。ラーメン屋の割り箸の袋や,今どきはめっきり少なくなったけれども,「純喫茶」のマッチの箱を広げて貼っておく。
● そういうことをやってみることだと思う。それをすれば,旅するように日常を生きられるのか。
そうすれば必ずできるのだったら,生きるとはイージーな作業だということになる。だから,その質問に対する答えは Yes ではない。
けれども,頭の中で思考して,決心するだけでは,100%上手くいかないだろう。頭ではなく身体を使ってみることが必要で,具体的な行為や作業を通すことが必要で,その行為なり作業として「貼る」というのは有力な方法になり得ると思う。
● InstagramやTwitterで,たとえば “ほぼ日手帳”や “測量野帳” で検索してみると,ほぼ日手帳や測量野帳をどう使っているかについての膨大な投稿やツイートをまとめて見ることができるが,「貼る」をやっている人はかなり多い。
他に,「描く」をやっている人も多い。これも,旅するように日常を生きるための具体的方法論として,かなり有力なものだろう。自分の日常にあるものを描いてみるというのは,絵心があれば,自分もやってみたいことのひとつだ。
● こういうのを見ていると,旅するように日常を生きている人がこんなにいるのかと思わされる。その大半が女性であることにも注目すべきだろう。
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