2023年4月9日日曜日

2023.04.09 武田 健 『はじめてのガラスペン』

書名 はじめてのガラスペン
著者 武田 健
発行所 実務教育出版
発行年月日 2021.12.10
価格(税別) 2,000円

● タイトルどおりのガラスペンの入門書。あるいは紹介書。メインは第2章の「煌めくガラスペン図鑑」。「29の作家やメーカーの美し作品180本を解説します」というもの。
 その中から,ぼくが1本選ぶとしたら,Shoko Yamazaki の「Basic 茜色」かなぁ。

● いくつか転載。
 洗って使えるのだから,「1本あれば十分じゃないか?」と自問自答することもあります。なのになぜ何本もほしくなるのか? それは,ガラスペンは筆記具でありながら,芸術品でもあるからではなかと思っています。(p6)
 (ガラスペンの)金額は,主に軸の加工賃だと思っていいでしょう。(p17)
 アーティスティックな形状にすることもできるけれど,そういうのを作っている人は他にすでにいるので,別に自分がわざわざやる必要はないかな,と。(長谷川尚宏 p28)
 シンプルはすごく難しいんですよ。フォルムが丸見えなので,ちょっと曲がっていたらそれがそのまま,しっかり見えてしまうんです。(中略)複雑なものが簡単というわけではないけれど,つぶしが効きやすい。(長谷川 p30)
 僕はガラスペンはファッションの域だと思っている。それはすごく大事なことだと思うんです。(長谷川 p31)
 ガラスペンのよいところはたくさんありますが,透明なペン先にインクが乗っかる瞬間がすごくきれいなんですよね。さから,描きたくなる。(サトウヒロシ p116)
 安くて気軽に使える木軸のもので描いていたんですけど,難点があって・・・・・・。ペン先のインクを落とすために水につけておくと,水分で木がふやけてしまうんです。すると,ペン先がスッと抜け落ちてしまう。(サトウ p116)
 とりわけ動いてほしくない下地の色には,顔料インクが大活躍です。(サトウ p119)
 ガラスペンが陽の光を浴びると,ガラスが光に反射して,本当にきれいなんですよね。(堤 信子 p123)
 ガラスペンは何気なく走り書きできる筆記具ではないので,使うことをより意識する時間になるのではないでしょうか。(堤 p123)
 見た目が涼しげなので,個人的には夏に使用するのが好きです。ペン先でインクの色が透ける様が何とも美しく,気分が上がります。(森由美子 p132)
 ベストは作家さんから直接買うこと。2番目がガラスペンを取り扱っている店舗で,できればベテランの販売員さん,詳しい販売員さんがいるところがいいですね。物作りの「買い手」と「作り手」のつながり方の原点だと思います。(p141)
● では,自分がガラスペンを使うことがあるかというと,なさそうだ。こういう世界は人を選ぶ。芸術や工芸という世界に足を踏み入れることになるわけだから,マスがその対象になることはない。
 ぼくは選ばれない側の人間。なぜというに,大量生産品を使いたいからだ。手作りとか1本モノとか工芸品とか,そういうものを手に取りたいとは思わないタイプ。

● 樹脂にも抵抗がない。ガラスペンを造形する過程で消費する火力を考えれば,環境負荷はプラスチックのボールペンの方がはるかに少ないはずだが,そういうことではなくて,いわゆる安っぽいものを使うことに抵抗がないということね。
 その中には安価を求める志向も含まれる。安い方がいい,と。本当に1本モノとか工芸品といったところを追求すれば,ガラスペンの価格は1万円が最低だ。なかなか手が伸びないというのが実情。

● 現在はインク沼がガラスペンの需要を刺激しているところがあって,本来はガラスペンには馴染まない人までガラスペンを使っているという状況があるのじゃないかと思っている。ガラスペンはバブル期にあるかもしれない。正直,本書で紹介されているガラスペンの中にもそれ(バブル)を感じさせるものもある。
 しかし,観る阿呆よりは踊る阿呆に回った方がいいかもしれない。

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