2020年7月4日土曜日

2020.07.04 前田裕二 『メモの魔力』

書名 メモの魔力
著者 前田裕二
発行所 幻冬舎
発行年月日 2018.12.25
価格(税別) 1,400円

● 本書で説かれているメモの取り方はデジタルではできない。紙とペンでこそ。
 この本はかなり売れた(今も売れている)が,読者の中で前田式を実際に始めた人は5%もいるだろうか。継続している人はほどんどいないだろう。1人もいないだろうと言ってみたいが,ま,数十人はいるかもしれない。

● それでいいのだと思う。いっ時,その気にさせてくれれば,この本は役割を果たしたことになる。
 いっ時で終わってしまったからといって,俺はダメな人間だぁ,などとは思わないように。この本を最後まで読めただけで大したもん。
 むしろこの本に引きずられなかったのは,あなたが賢かったからかもしれない。

● 以下に転載。
 映画や演劇などを見ていても,気づいたことを相当な分量メモします。おそらく,一つの作品につき,多いときで100個以上,少なくとも数十個のポイントはメモしていると思います。(中略)街に出るときも,(中略)自分の心がたくさんの情報をキャッチできるように,いつも思いきり毛穴をむき出しにして歩いています。(p4)
 なぜ僕は,ここまで狂ったように「メモ」にこだわるのか。それは,この「魔法の杖なんてない」と言われる世知辛い社会において,メモこそが自分の人生を大きく変革した「魔法の杖」であると直感しているからです。(p5)
 今の時代,自分を知ることはすごく大切です。今後,お金をどれだけ持っているか,ではなく,人の感情や共感などといった「内在的な価値」こどが評価対象になるという「価値経済」が大きく勃興することは,ほぼ間違いないでしょう。そんな時代の中で,「自分をよく知って何かに熱中している人」こそ,多くの共感を集める人になる,すなわち価値を持つのだと強く思います。(p6)
 現代において,僕が「本当に強い」と思う人材は,「想いの強い人」です。(P10)
 なぜここまで狂ったようにメモをとるのか。それにはいくつか理由がありますが,まず何より大切な理由が,この残酷なまでに時間が限られている人生という旅の中で,「より本質的なことに少しでも多くの時間を割くため」です。本質とは何かというと,コピーではなく創造,代替可能物ではなく代替不可能物,ということ。(中略)要は,「過去のファクトを思い出す」という余計なことに思考の時間を割かないために,メモをするわけです。(p22)
 僕らは人間です。「人間にしかできないこと」に集中するために,メモを活用していってほしいのです。単純に起きたことや見聞きしたkとだけを書き写すのではなく,新しいアイデアや付加価値を自ら生み出すことを強く意識して,メモを書き始めてみてください。(p25)
 すべてのアイデアは,ふだん無意識に通り過ぎてしまいそうなことに目を向けて,逃げずにそれらを「言語化」することで生まれています。(p27)
 きちんとメモをとる週間を身につけると,自分にとって有用な情報をキャッチするための「アンテナの本数」が増えます。(中略)メモをとる癖がない人は,実は,毎日「宝」をみすみす落とし続けてしまっているようなものだと僕は思っています。(p29)
 熱意を伝えたいのなら,紙がベストです。相手に伝えたい「想い」の部分が,ストレートに心に届くからです。(p31)
 メモを癖にしてしまえば,言葉にすることから逃げられなくなります。いわば,自家発電的に「言語化の強制力」を一人でも作り出すことができるのが,メモの力なのです。(p35)
 最初に強調しておきたい大切な価値観があります。それは,「メモは姿勢である」,ということです。(p38)
 ノートは原則,「見開き」で使います。(p39)
 気づきを抽象化することは必須ですが,抽象化で止まってしまうと,時に単なる「評論家」になってしまいます。自分が世界から抽出した気づきから,きちんとアクションに「転用」することを通じて,自分の日々が,人生が,変わっていきます。(p46)
 標語・タイトル・キーワードは,慣れてくればファクトを書きながらつけていけるようになりますが,慣れないうちは,あとで振り返ってメモを眺めて,標語をつける時間を意識的に設けるべきだと思います。そのくらい,標語力には価値があります。(p70)
 「世の中でうまくいっているもの」や,「自分が素直にいいと感じるもの」を見たときに,素通りせずに,キャッチして抽象化してみてください。「なぜかわかんないけど,このお店すごく居心地良かったな」という感想で大体終わるわけですが,その本質的要素をいくつか書き出して,抽象化しておく。すると,例えば今度は,居心地の良い別のコミュニティを自分が作る際にうまく応用できるのです。(p92)
 事業や,企画,何らかの自分の挑戦に自然と仲間が集まる状況を作るには,自分の内にある熱が伝染するような「生きた言葉」を使うことが重要です。この,言葉によって熱がつい漏れ出て伝わってしまう現象も,単に熱量があればよい,というものでもなく,かなりの部分を言語化の力に頼っている感覚があります。(p96)
 人は,原則,「何を言うか」以上に,「誰が言うか」を指針に,誰かの主張に耳を傾けるかどうかを決めているので,まだ大きな実績を持ち得ない個人が,どれだけ良いことを言っても,なかなか相手に届きません。であれば,戦略的に,まず「誰か」になる必要があるわけですが,そのために最も大切なことが,他者を巻き込むことです。(中略)では,どうすれば周囲を巻き込めるのか。それが,「言語」であり,ロジックです。(p97)
 自己完結のメモだとなかなか続かない人は,メモ代わりに,TwitterなどSNSを使ってみてください。○○が面白かった。それは,○○だったからだと思う,と,理由を言葉にしてしっかり伝えるのです。(中略)わかりにくく,どこかで聞いたことがあるような言葉は,共感を得られません。こうした上手にアウトプットをせねばならない一定の制約下で言語を届ける訓練を続けると,言語化能力は磨かれていくでしょう。(p100)
 人は,概念に名前をつけないとそもそも思考できません。記憶もできないし,他の何かに応用することもできない。人間は抽象化,そして言語化することによって,クリエイティビティを獲得しているのです。(p103)
 自分の心に刺さった語彙,引っかかる表現があったら,なるべくすべて・メモしておきましょう。(p109)
 抽象化能力を引き上げるに当たって,もう一つ,マストで身につけておくべきことがあります。それは,「自分を一歩退いて客観視する癖」です。(中略)日々特に意識をせずにメモしていると,つい「我見」によりがちです。離れた場所からフラットかつ客観的に身分を見つめる「離見」を意識することが,抽象化においても大切なのです。(p110)
 どうしても,命を削ってでも,人生をかけて実現したいことがある。そのための武器がメモであり,その強い思いこそが,メモに対する飽くなき姿勢を支えてくれているのです。(p117)
 最終的には「自分は何をやりたいのか?」という問いに行き着きます。(中略)お金のあるなしに関係なく,やりたいことが明確な人が一番幸せだと思っています。(P118)
 僕は,何かに熱狂している「オタク」であることが,価値創出の根源になると考えます。あることについて,めちゃくちゃ詳しくて,好きで好きでたまらない。いつだって,ついそのことばかり考えてしまうような人物です。(p120)
 自分自身のことを深く知ると,不思議と,自然に自信を持てるようになります。(p124)
 どうしても紙に書けない環境下で何かやりたいことを思いついた場合は,デジタルメモでもかまいません。しかし,しっかり脳に染み込ませる意味では,情報量が多く右脳でも記憶しやすい,アナログの文字にして一度見つめてみるべきだと思います。(中略)ある人は,「デジタルのメモは,ブラックホールの彼方に消えてしまう」とよく言っています。(中略)デジタルのメモは,何度も見返すきっかけを作ることはなかなか難しいという欠点があります。(p146)
 「なぜ流れ星を見た瞬間に願いを唱えると夢がかなうのか?」,考えてみたことがありますか?(中略)僕が思うには,「流れ星を見た一瞬ですら,瞬間的に言葉が出てくるくらいの強烈な夢への想いを持っているから」です。(p147)
 目を閉じて,具体的に,ビジュアルを描けるか。(中略)「想いの言語化」は,その絵が浮かぶくらい,想像し切らないといけません。(中略)なぜそれができるかというと,夢や目標に対する実現欲求が異常に強いからでしょう。そのとき,「思い」から「想い」に進化していくのです。(p151)
 「メモをとらないと忘れてしまうようなことは重要ではなから,覚えておく必要はない」「記憶力のスクリーニングにかけたほうがいい」という説があります。僕は,現時点では,その説には懐疑的です。完全に創造性だけが問われるような右脳に寄った仕事をされている方は,この限りではなく,むしろ忘却によって自分の完成が研ぎ澄まされる,ということもあると思います。(中略)しかし,左脳と右脳を両方駆使して,問題解決や知的星団に向き合い続ける仕事をしている場合,メモは避けて通るべきではない,必要不可欠な魔法のツールだというのが僕の考え方です。(p182)

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