2020年7月14日火曜日

2020.07.14 太田あや 『外資系コンサルは,なぜ,あえて「手書きノート」を使うのか?』

書名 外資系コンサルは,なぜ,あえて「手書きノート」を使うのか?
著者 太田あや
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2018.10.12
価格(税別) 1,400円

● 考えるとは手を動かすこと。それがこの本のテーマというか通奏低音になっている。手書きすることをしないで考えることができるんだろうか,ということ。
 パソコンの画面を見ながらキーボード入力することによって考えることはできるか。できなくはないけれども,“考える”側から見ると効率が悪い。

● 以下に転載。
 澤さんは,今,20年ぶりにノートを使い始めているという。きっかけは,造形作家の奥さまだっが。「クリエイティビティなことを考えたいな」と話す澤さんに,「それなら手を動かしたらいいよ」とB6サイズのノートを渡してくれた。(p20)
 人は,昔から,書くことで思考し,書くことで表現してきた。書くという行為は,思考,表現と揃いのものだった。キーボードが誕生して以来,人は,それに併せて指を動かし言葉をうつようになったが,それは,人間本来の動きではない。機械に合わせて人間が身につけた動きだ。(中略)「人が機械に合わせるのではなく,機械が人に合わせていく時代になっていきますよ」(中略)澤さんはそう感じているのだ。(p32)
 最近は,絵を描きたいと感じるようになり,造形作家の奥さまに相談したそうだ。そんな澤さんに奥さまは,「人に習うよりもたくさん描いたほうがいいよ」と今度はスケッチブックを渡してくれたという。(p34)
 考えながらパワーポイントで作るというのは,すごく速いようで遅くなるんです。パワーポイントに向かうと思考停止してしまうので。(中略)パワーポイントは機能が多すぎるので,そのことに足をすくわれるんだと思います。フォントやデザインに悩んでしまい,肝心の考えることが後回しになってしまう。(中略)余計な情報が入ると,思考は鈍ってしまう。紙に向かえば,考えていないことはすぐにわかる。手が止まるからだ。しかし,パソコンに向かえば何らかの作業ができるため,考えているつもりになってしまう。(p40)
 アマゾンやフェイスブックなど,社内の会議においてパワーポイントを禁止する会社が世界的にも増えてきている。(p56)
 コンサルタントは,自分で創り出さないといけない仕事です。デジタルを使いこなしてもアイデアは生まれないと思ったんです。(p63)
 多武さんは,A5サイズの「ロディア」を愛用している。あるとき,出張先のシドニーでオーストラリア人が多武さんの「ロディア」を見て「小学生の頃に使っていた」と懐かしそうに言ったそうだ。「子供が使いそうなノート。それがいいんです。わくわく感,たのしいと思う気持ちが,やる気の動機付けになるんです」(p64)
 小学生がロディアを使う? ずいぶん贅沢な小学生がオーストラリアにはいたものだな。
 広大な平野では,アイデアは際限なく生まれるという人がいるけれど,それではフリーすぎて何も生まれない。制約が必要だと思うんです。僕の場合は,A5の紙1枚にまとめるということが制約です。(p67)
 このノートを5冊使い終えたあたりから,「同じノートで書き続けることが生産性が最も高い」と感じるようになったという。(中略)ノートを選ぶという行為自体も中さんにとっては時間の無駄使いとなる。使い勝手が良ければ,会社にあるノートをずっと使い続けることはとても合理的なのだ。(p93)
 島田さんは,A4のコピー用紙を使い続けている。(中略)自由に,軽やかに,何の制限もない中,頭に浮かんた図を描いていく。そのためには,何も描いていない真っ白な舞台が必要だったのだ。(p128)
 「会社の先輩も上司もみんな,A4サイズの方眼ノートパッドを持ち歩いています。自前のノートを持っていなくても,この方眼用紙はみんな使います」 何に驚いたかというと,資料を作る際に,A4方眼用紙1枚に,パワーポイントのスライドにどんなメッセージを書くのか,どんなグラフを入れるのか,ドラフトを手書きにして上司に見せてほしいと言われたときだった。(p147)
 新事業開発や新サービス開発のコンサルということは,ゼロイチと言われる,何かを生み出す仕事に携わるということです。何かを生むために思考を始めると,手を動かさないといけないと感じるようになり,ノートを買ったんです。(p185)
 縦長のノートだと何が起こるかというと,大概文章しか書かなくなるんです。それなら議事録のようにパソコンを打てば早い。(p186)
 ノートは,いつも書いたときの自分や考えていることを映してくれる。そこに映し出された自分を見つめ,ときにはその自分を脳にもう一度焼き付ける。これを繰り返すことが,考えることであり,自己との対話だ。(p199)
 週末,一人会議室の真っ白な壁に向かい,浮かんでくるアイデアを書いては消し,書いては消しを繰り返し,少し離れて書いた内容を眺めてみる。まとまったと感じたら,写真を撮り保存する。長いときは6時間ほどホワイトボードの前にいることがあるそうだ。(p214)
 頭の中に何かが浮かんだ瞬間,その言葉やイメージを捉えると,書こうと思う間も無く,手はもうホワイトボードに書き出している。反射の勢いだ。(p215)

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