2020年5月21日木曜日

2020.05.21 上野駅構内のANGERSと大手町の丸善

● 東京に来た。3月22日以来だ。別に用事はない。ぼくが東京に出る理由はホテルでマッタリするか,音楽の演奏会を聴くか,そのどちらかだ。
 ホテルはビュッフェ形式の食事提供はできなくなり,サウナやジムも休止している。両手両足を縛られて,プールに放り込まれて,さぁ泳げと言われているようなものだ。音楽の演奏会はとても開催できる状況にない。
 加えて,東京都知事が来るなと言うのだし,各県とも県境を越えての移動は望ましからずと言っているのだ。

● というわけなので,今の東京に用事のあろうはずもないのだが,金券ショップで買った乗車券(回数券)の有効期限が今日までなのだ。流してしまうのはもったいない(じつは2枚ほど流してしまっている)という,貧乏性にもほどがあるという理由による。
 そんな理由で出かけていってもしコロナに感染したらどうするのだ,とは考えない。もし,本気でそれを心配するのなら,車で出かけて交通事故にあって死んだらどうするのだと心配する方が,心配のしがいがあるというものだ。

● しかし,午後3時台の上りの宇都宮線はガラガラだ。新幹線が空気を運んでいるというのは,ネットにもしばしば登場する話なので,そうなのかと思っているが,在来線もそれに近い。なるほど,皆さん,ちゃんと外出を自粛していらっしゃるのだなとわかる。
 逗子行きの湘南新宿ライン快速に乗った。古河で上野東京ラインの普通列車に乗り換えた。

● 上野で下車。構内のANGERSを覗く。安めの万年筆を集めたコーナーがあった。プラチナのPlaisirとかね。その中にセーラーのふでDEまんねん(プロフィットタイプ)があった。噂(?)は聞いていたけれど,実物を見るのは初めてだ。
 試し書きをしてみた。なるほど,筆ペンを買うより気が利いているかも。価格も2千円だ。

● が,今どき,筆チックな書体を求められるのは,香典袋に名前を書くときくらいだ。手書きで手紙やハガキをひんぱんに書く人なら格別,そうじゃない人には縁のない筆記具だろう。
 セーラーもそんなことは承知のうえ。ニッチを埋める商品だとわかって,開発・製造・販売をしているだろう。

● 秋葉原で降りてヨドバシでも覗こうかと思ったが,その気力は湧いて来なかった。パソコンもスマホもすっかりコモディティ化して,もはや何の吸引力も持たなくなった。
 トイレットペーパーの新製品が出たからといって,そんなものに気づく人もいないだろうし,わざわざ見に行く人もいないだろう。それと同じ。パソコンやスマホはトイレットペーパー並みになってしまった。

● で,東京駅。丸の内北口の改札を出て,トラベラーズノートのショップを見てみようかと思ったんだけど,地下にある店はすべて営業していないようだった。
 丸善は普通に営業中。4Fの文具売場に行ってみる。ずいぶん広いんだな,ここ。丸善は日本橋にもあって,ここ(大手町)とはやや客層が違うのかもしれないが(違わないか),文具は丸善で買う,銀座の伊東屋には行かない,と決めている人がけっこういそうだな。

● が,ぼくが注目したのはいたって下世話なもので,A5サイズシステム手帳の保存用バインダーだ。A5サイズのシステム手帳と使った時期が何年間かあって,その使用済のリフィルを保存しておくための安価なバインダーが見つからなかった。バイブルサイズなら,Seriaに紙製のちょうどいいのがあるんだけどね。
 ので,20穴パンチで穴をあけて,ダイソーで売っていたA5サイズバインダーに綴じて保存してあるんだけど,それじゃあ,あまりといえばあまり。保存用バインダー(安いのなら380円からある)を買って帰って綴じ直そうか。
 とりあえず,帰宅したら確認して,必要なら次回来たときに買うことにした(→ その必要はなさそうだ)。

● というわけだ。ほんと,ぼくは見るだけで終わる。買うことがない。買うのは百円ショップか,よくて無印になるからだ。
 丸善に置いてあるのは高級品ばかりではない。文具なんだから,高級品といったって値段は知れているわけだが,それ以前に,日本製の文具は,筆記具にしろ紙製品にしろ,高品質・低価格を実現している。何を買っても大丈夫という安心感がある。
 それはつまり,どこで買っても大丈夫という安心感にもつながる。丸善なら安心という時代ではなく,田舎町の文具店でもそこのところの不安はない。

● ANGERSにも少し飽きてきた。買うなら普通の文具店,LoFtでも上野文具でもジョイフル2でも,がいい。セレクトショップというかデザインショップというか,そういうところではなくて,普通の店で買いたい。
 店側の主張や見せびらかしを“提案”と称して表に出すような,と言っては言いすぎだろうか。ANGERSはだいぶ控えめにそうしているのだけど。

● そうした主張や見せびらかしが心地よい刺激と感じる時期があったが,それをノイズと感じるようになってきた。おそらく,ぼくひとりに限ったことではないだろう。
 提案型ショップはこれから難しい局面を迎えるだろう(もう迎えているか)。文具店にしろ,書店にしろ。
 提案がそれとわかる形になってしまっていてはダメなような気がする。そこを上手くやっているのが無印良品かも。淡々と陳列しているふうで,その淡々の中にたくまざる提案がこめられている。

● しかし,そうしたものは程度問題ではある。普通の文具店といったって,何を仕入れてどう陳列するかにその店の個性は現われる。
 LoFtに入れば,そこがLoFtであることはただちに了解される。すべての店はセレクトショップであり,デザインショップになる。

● ということもあっての話なのではあるけれど,自分は丸善やセレクトショップで買物するほどの男じゃない,と自分を卑下している気配はあるかな。
 いや,それは卑下じゃなくて,正当な自己評価だよ,と言われるかもしれないけどね。

0 件のコメント:

コメントを投稿