2020年7月29日水曜日

2020.07.29 黒板の次は鉛筆

● トナリエ宇都宮のダイソー。大した情報じゃありませんが,三菱鉛筆の9800が4本100円で売られているんですね。
 鉛筆って,絵を描く人であっても,ファーバーカステルやステッドラーの必要あります?
 ユニの必要すらなくて,昔からある9800で充分だったりしませんか。深緑の色も素敵じゃありませんか。

● ダイソーでは6Bの鉛筆も売っているんですよ。ダイソー印で出ていますが,製造は北星鉛筆です。それだけでリスペクトしちゃう。
 鉛筆,使ってみようかなぁ。使わないだろうなぁ。5年前に北星の「大人の鉛筆」に惹かれて買ってみたんだけど,結局,使うことのないまま今日に至ってる。

● 鉛筆は小学生の頃から使っているので,ノスタルジーを喚起するのだよね。年を取れば取るほど鉛筆回帰願望は高まるのかもしれない。
 人は子供に帰って死ぬ? 釣りは鮒に始まって鮒に終わるように,海外旅行はハワイに始まってハワイに終わるように,筆記具は鉛筆に始まって鉛筆に終わる?

● 鉛筆って消しゴムとセットだったから,鉛筆で書いた文字は消えるもの,消せるものと思っているけれども,じつは消しゴムで消しさえしなければ,鉛筆の文字はいつまでも残る。
 万年筆や水性インクで書いた紙に水滴がつけば,文字は滲んで読めなくなる。鉛筆で書いた文字ならば,そんなことではビクともしない。
 100年,200年のオーダーで考えれば,残る可能性が高いのは鉛筆文字ではないか。最強なのは墨を摺って筆で書いた文字ですかね。完全に乾いたあとならば。それに次ぐのは墨芯なのでは。

● 手帳にはずっとシャープペンを合わせてきた。それをやめたのは,書いた文字が紙に擦られて汚れてしまうからだった。が,片面にしか書かないカードのようなものなら,鉛筆で書くのはありかもしれない。
 だから,鉛筆を使いだすことがあるとすれば,カード(メモパッド,付箋)を使って何かを書くようになったときかなぁ。

● ダイソーに来たのは,鉛筆じゃなくて両面テープを買うためだった。ニチバンのナイスタックも置いてある。15mm幅で3m。対して,ダイソー印のは10m。
 買ったのは10mmのを半分にカットしてやつ。5mm幅のが2本。長さは12m。これで2年はもつ。
 結局,安さに負けてしまう。安さは正義なのだ。

2020.07.29 黒板が欲しくなった

● トナリエ宇都宮の落合書店の文具売場を見ていたら,オキナのプロジェクトペーパーの恐竜編(A7 5mm方眼 70枚)が特売(?)コーナーに並んでいた。100円で。100円なら買っとくかというわけで,10冊ほど買ってきた。
 でも,なぜこれが100円で売られていたから。何ですかね,もう生産を終了するんでしょうかねぇ。ぼくはロディアよりこちらがいい。方眼の罫がおとなしいのと,方眼が片面印刷であること。

● 以上は昨日のこと。今日も落合書店に行った。昨日残してきたのを全部拾っておくことにした。残っていたのは9冊。もっとあったような気がしたんだけど,いくつかは誰かが買っていったのだろうな。
 問題は,このメモパッドをどう使うか。こう使えばいいというシチュエーションが浮かんで来ない。使わないで終わるかもしれない。
 とりあえずは,ロディアNo.11のカバー(ケース?)に入れて持ち歩き,ふと思いついたことをササッとメモするのに使おうかというわけなのだが,そんなことを自分がするとは,正直,その自分が思っていない。

● メモパッドについては以上で終わり。
 落合書店の文具売場で気になったのが黒板だ。ダイソーにもあるんだったら,価格からしてダイソーで買うのだが,ブラックボードはダイソーにもあるけど,さすがに黒板は見たことがない(黒板シートはある)。
 自分で商売をやってる人くらいしか使いませんかねぇ。

● でも欲しい。庭先に持ち出して(わが家に庭はないんだけど),こいつを使って落書きをして遊びしたい。ホワイトボードより想が湧いて来そうな気がする。そういう気分にさせるところが味噌。単なるノスタルジーでしょうか。
 といって,ホワイトボードをこの黒板に置き換えるわけにもいかんでしょうなぁ。奥さんがイヤな顔をすると思う。チョークの粉問題は,ダストレスチョークで解消されているのだろうけど。

● こういうのもあります。紙の黒板。B4なら見開きでB3になるわけだから,たくさん書けますよ。買うならこっちかな。
 ダイソーでホワイトボードを1つ買い,もう1つ買いして,3つほど溜まったんだけど,最近(正確にいうと,隠居生活になった4月から)それぞれに使うようになっている。
 が,ホワイトボードにマーカーで書くのはツルツルして,何だか頼りないっていうか。そこがいいのだとも言えるのかもしれないんだけど,もっと書いているときに抵抗感が欲しいなと思うんですよね。

2020年7月26日日曜日

2020.07.26 銀座 LoFt

● 無印良品の店でもそうなのだが,LoFtでも文具しか見ないので,銀座LoFtに来たときも5階に直行する。
 エスカレーターで5階に着くと,そこは手帳売場になっている。たいていの手帳メーカーは9月に翌年度の手帳を出す。ので,今は端境期となる。書店では,手帳売場を撤去する時期だ。

● が,LoFtではそういうことではなく,この時期でも手帳を一等地に置いている。ここでは1年中,手帳が売れるんだろうか。あるいは別の理由があるのか。
 ほぼ日手帳を扱っているのが大きいんだろうか。ほぼ日を買おうとすれば,LoFtに来るしかない。そのほぼ日では手帳本体の他に,いくつものアクセサリー製品を提供している。ほぼ日を扱うことで,他社の製品もよく出ているという相乗効果があるんだろうかな。

● 店内を見る限り,LoFtは若者と女性に訴求したいと考えている(と推測される)。かといって,サラリーマンのオッサンを拒絶しているわけではない。
 NOLTYや高橋も扱っていたはずだ。そこはそれ,NOLTYや高橋でも女性を意識した商品をどんどん出しているわけだけど。

● よそではあまり見かけないノートがある。カステリミラノだ。イタリアの会社。モレスキンタイプのゴムバンド付きのハードカバーなんだけども,デザインだけでなく製造もイタリアでやってるよと謳っている。モレスキンと一緒にしないでね,ってわけね。
 花柄模様の印刷が小口にまで及ぶ徹底ぶり。へぇぇ。予め器がデコられている。したがって,内容も盛りやすいだろう。それゆえ,このノートもメインユーザーは女性になる。

● いまだにバレットジャーナルが寵児になったままのように見受けられるのだが,このノートも頁数が印刷されている。巻頭にインデックスのページが用意されている。ロイヒトトゥルム1917の向こうを張っている感じ。
 半可通な理解のままで申しあげるんだけど,バレットジャーナルって斬新なの? どこかに斬新な部分があるの? 作られたブーム(したがって,早晩消える)のように思えるんだけどねぇ。

● モレスキンの品揃えは,ここが最も充実しているのではないかと思う。
 モレスキンはイメージだけで売っていると思うのだが,それなのに広告をほどんどしない。広告しないのもイメージ管理戦略上にあるものなのか。
 ぼくはモレスキンに対してはアンチだ。だから,モレスキンなんて無視すればいい話なのだけど,そこがアンチの弱さであって,ついつい気にしてしまうのだ。

● しかし,売場の作り方は上手い。モレスキン社の社員が派遣されているんだろうかなぁ。
 今回は「プロコレクション」が目を惹いた。1枚の写真が置かれている。工房らしきところで立ち働いている男性が「プロコレクション」に何事かをメモしている写真だ。作業中に気づいたことがあったのだろう。
 という具合に,この写真が雄弁に語りかけてくるのだ。こういうところは上手いよなぁ,モレスキン。

2020.07.26 タッチアンドフロー日本橋高島屋S.C.店

● 高島屋の新館5階に行くと,ますズターバックスが目に入る。広くゆったりとした座席の配置だ。コロナ対策でそうしているのではなく,そんな対策など必要としないほどに,普段からゆったりと配しているとぼくは見たが。
 なので,さすがは日本橋,さすがは高島屋的な,セレブっぽい風情を醸しているわけですよ。

● ところが,ググッと近づいてみるとね,お客さんは普通のアンチャンやネーチャンでね。
 パソコンの画面を見せて,なにやら商談中の人もいましたが,一番多いのはスマホを眺めてボーッとしている人。良くも悪くも普通の人たちだ。
 遠景と近景はだいぶ違いますねぇ。何やらホッとしたっていうかさ。

● さて,このフロアに「TOUCH & FLOW」が入っているっていう情報を得ておりまして。情報源はどこかの雑誌の文具特集だったと記憶しているんだけども,この記憶はわれながらあてにならない。
 「TOUCH & FLOW」とはいかなるショップかというと,「デザインフィルが手掛ける大人向けな文房具店」ということ。デザインフィルといえばトラベラーズファクトリーも手がけている。東京駅にあるトラベラーズファクトリーには何度か足を運んだ(といって,ぼくはトラベラーズノートのユーザーではないのだが)。そのトラベラーズファクトリーとどう違うのか。

● トラベラーズファクトリーは丸太小屋的な感じ。対して,「TOUCH & FLOW」は小洒落た小さな別荘といったところか。
 トラベラーズファクトリーはトラベラーズノートがメイン。「TOUCH & FLOW」でも店内のいいところにトラベラーズノートが並べられているが,それが売場の過半を占めることはない。

● 「TOUCH & FLOW」のオリジナル(と思われる)商品もある。“TODAY”という商品名のダイアリー。単一ではなく,いくつかのフォーマットがある。手帳的なのと日記的なのと。
 しかし,トラベラーズノートのダイアリーとも競合するわけだ。PLOTTERもライバルになるわけだろう。この分野はレッドオーシャンなのかもしれないねぇ。

● 「TRAVELER'S TIMES」もあったので,1部もらってきた。フリーのPR紙といってはいけない。フリーだし,PRも含まれているんだけれども,読むに値する記事が満載なのだ。
 で,読み始めたんだけど,あれ,これすでに読んだな。2019年8月に出ている。待てよ,ということはもうこのPR紙の発行はやめてしまったのか。
 と思ったのは,ぼくの早とちりで,「TRAVELER'S TIMES」は年に一度の発行なのだった。もうすぐ最新号が出るのだろう。

● 藤沢にも店がある。その湘南店は蔦屋の湘南T-SITEに入居しているらしい。なるほど,デザインフィルと蔦屋は目指す方向が同じかもしれない。
 同じだから競合するのかとも思うのだが,蔦屋は自社でノートや文具は作っていなかったか。

2020.07.26 丸善 日本橋店

● 1階に書籍が並んでいて,地階が文具。あと,時計と眼鏡の売場がある。
 という程度の認識だったけれども,2階と3階にも書籍,特に専門書や学術書が揃っているらしい。らしいというのは,ぼくは2階には上がったことがないからだ。
 で,主にお邪魔するのは地階の文具売場。見るだけの通行人なんですけどね。

● 文具を買うならここ,と決めている人ってどのくらいいるんだろう。年配のお婆さまに多そうな気がするが,偏見でしょうか。若い人はこういう問題(?)とは無縁でしょう。
 伊東屋と決めている人がいるかもしれない。そういう人は伊東屋にしか行かないだろう。昔からそうなんだよ,そういうものなんだよ,という感じでね。
 年配者の中には丸善と決めている人も多そうだ。かつては伊東屋と丸善しかなかったのだ。つまり,筆記具といえば万年筆であり,それは上流階級の人たちが使うものだったから。上流の御用達が丸善だった。そういう記憶をリアルに残している人がまだいるだろう。
 東急ハンズやロフトになると,浮動票をどうやって取りこむかという店作りになる。ならざるを得ない。お客の自店に対するロイヤリティーは高くない。顧客の平均年齢も丸善よりはだいぶ若くなるだろう。

● 文具もどんどん品質があがり,ニッチな用途を突いてくる商品が多くなった。そうなると,文具が実用品から嗜好品になってくる。嗜好品の特徴は好みの幅が狭くなることだ。というより,ピンポイントになってくる。
 煙草が典型的にそうだ。今や絶滅危惧種になった両切りのピースを愛煙している人にとっては,煙草とはピースなのであり,それ以外は煙草ではないのだ。ピースの人にハイライトを贈ってもどうにもならない。舌打ちをして捨てるしかないからだ。

● 文具にもそういうことが起きているかもしれない。たとえばノートだ。書けるなら何でもいいという人は少なくなる。自分はトラベラーズノートに決めている,それ以外はゴミだ,という人もいるかもしれないし,逆にトラベラーズノート以外だったら何でもいいという人もいるかもしれない。ニッチ化,セグメント化が進行中のように思われる。
 そうなってくると,メーカーや製品へのロイヤリティーがすべてになる。買うのはAmazonでいい。

● 一方で,安さが正義,あとは何でもいいよ,という人だって依然として残っている(ぼくはこれに属する)。文具メーカー? コクヨがあればいいんじゃね? という人。
 そういう人にとっては,より一層,どこで買うかなんて問題にならない。

● という状況の中で,どの文具店も生き残りをかけて智慧を絞っているだろう。妙な言い方になるけれども,その絞った智慧の結果を見たくて文具店に行くという向きも出てくるだろう。ほほぅ,そういう答案を書いてみたのね,と。
 といっても,丸善のしかも日本橋店にしたって,そんなに尖った店作りはできない。やればお客を失う可能性が高い。売れ筋というのは厳然とあるのであるからして。

● ともあれ。見ていこう。
 万年筆売場。全部ではないけれども,ここにあるのは高級万年筆。丸善の存在価値の過半はここにあるのかもしれない。
 偏見かもしれないけれども,丸善のお得意さんは保守派のエグゼクティブ。そういう人が使うのは,かつてはモンブランで,今ならペリカン,ウォーターマン,パーカーといったあたり。
 アウロラやデルタといったイタリアブランドは,その存在を認知はされながらも,なかなか買ってはもらえないといったところではないか。

● プラチナのノック式万年筆キュリダスの試し書きができた。宇都宮でも,JOYFUL2と上野文具にはキュリダスが置かれているが,試し書きはできないっぽいのだ。ガラスケースに入っていたりするし。
 さすが丸善では直に置いてある。M,F,EFとあって,買うならEFと決めている。そのEFでも充分に滑らかな書き味。ま,紙もいいんでしょうけどね。
 が,今に至るも買っていないのは,退職した4月以降,手書きで文字を書くことが激減してしまったからだ。立ったまま書くという状況には遭遇しそうもない。つまり,ノック式万年筆を使う機会はないということだ。だからまず,以前のように“書く”という状況を作ることから始めなければならない。

● 今年はなかなか梅雨が明けない。8月になるのだろう。梅雨が明けたら,日はだいぶ詰まって短くなってましたってことになりそうだ。
 加えて,梅雨明けのひと月後には来年の手帳が書店や文具店に並ぶことになる。夏になったと思ったら,かつては年末の習俗(?)だった手帳選びが始まってしまう。このゴチャゴチャ感。

● 選ぶといっても,ぼくは来年使う手帳はもう決めている。ずっとBindexの011を使ってきたけど,来年は031にする。見開き2週間のやつ。ダイソーのでもいいんだけども,時刻メモリはあった方が便利なのと,“年間計画表”がね,ダイソーのには付いていない。これ,けっこう重宝するのですよ。
 3年間は031を使う。その後のことはそのときになってから考える。もし,生きていれば。

● その031(もちろん,今年のやつ)が売られているんですよねぇ。買う人がいるんだろうか。いや,いるからこそ置いているんだろうけどね。
 他の文具店では1月始まりの手帳は5割引とか7割引,4月始まりの手帳は3割引にしているところが多い。しかし,この031は定価販売のようだ。丸善って,ひょっとして,世俗から超然としているんだろうか。

● フランクリン・プランナーの前でもしばらく佇んでしまった。まさにシステム手帳と呼びたくなるような,自己完結型の時間管理システム。時間管理というより,生活管理と言った方がいいんだろうか。
 こうしたものに対しては,ぼくは懐疑的だった。システムに縛られる不自由さを感じてしまうせいもある。もっと緩やかで,もっと多彩でいいではないか。ゆらきのないカチッとしたシステムに合わせてしまうと,大事な何かが零れ落ちてしまうのではないか。
 しかも,あまりに精緻だと,使いこなせないまま終わる公算も大きい。あるいは,システムの奴隷にさせられるかもしれない。

● というわけで,『人生は手帳で変わる』は読んだけれども,これを使ってみようと思ったことは一度もない。のだが,仕事をやめてみて,フランクリン・プランナーが気になり始めている。
 フランクリン・プランナーが想定するのはバリバリのビジネスマンだろうから,ぼくはもう対象じゃないんだけれども,自分の24時間,365日をどうデザインするかは,自分の胸先三寸で決めることができる。上司や同僚や取引先の予定に縛られることはない。スケジュールの共有化なんぞという愚にもつかない標語によって干渉されることもない。
 だったら,かえってフランクリン・プランナーの閉じた精緻なシステムと相性が良くなってるかもしれない。フランクリン・プランナーが示すところに素直にしたがって,自分のこれからを考えてみるのも悪くはないのではないか。

● NOLTYのハードカバーノート。何とも言えない質感。こういうものを誰が使っているんだろう。と,事大的に考えてしまうのが,ぼくのダメなところだ。
 誰でもない普通の人が使っているはずだ。そう断言できるのは,能率手帳ゴールドを誰でもない普通の人が使っていることを知っているからだ。
 それでいいのだよね。普通じゃない人にしか使ってもらえなかったら,その商品はあっという間に市場から姿を消してしまうもんね。市場にあるということはつまり,普通の人が使っているということですよ。人口の99.7%は普通の人だもん。

● というようなことが頭に浮かんでは消えていった。考えごとをしたくなったら丸善へ。丸善に来たら,考えごとに身を任せてみよ。

2020年7月25日土曜日

2020.07.25 銀座 伊東屋

● ロビー的な1階は別として,2階が“SHARE”と題されたフロア。便箋やバースデーカードが置かれている。一番いい場所にねぇ。今はこういうものが売れている?
 ぼくが思春期にあったのは半世紀前。リアルを超えて誰かとつながるには“ペンパル”になるしかなかった。“文通”ですね。当時は中1コース(学研)とか中2時代(旺文社)という月刊の学年雑誌があって,ぼくは愚かにも中1から高3まで,毎月欠かさずに買っていたんだけど,そうした雑誌にもペンパル募集のコーナーがあった。

● 実際,ヘビーに文通をしていた時期がある。大学の後半の2年間だ。相手は高校時代の同性の友人。一番安かったコクヨの「書翰箋」を使っていたね。
 ペンは何を使っていたのか憶えていないが,ボールペンではなかったはずだ。当時のことゆえ,ボールペンといえば粘度の高い油性ボールペンしかなかったはずだが,ボールペンを使った記憶はない。万年筆は持っていなかったはずだ。さて,何を使って書いていたのか。

● 彼とは社会人になってからも2年くらい,文通を続けていた。中身的にはこっちの2年間の方が濃かったかもしれない。
 しかし,同郷にいて会うこともできるようになり,互いに仕事を持つようになると,手紙を書くことが億劫になり,自然に途絶えてしまった。
 結婚してからは会うこともなくなった。60歳になってから,ぼくは年賀状も出さないことにしたので,彼とも賀状のやり取りもなくなった。

● その彼と先日,偶然に出くわした。ひょっとすると,手紙のやり取りが復活するかなと思った。ちなみに,彼は視覚障害があって,パソコンやスマホの画面とは相性が悪い。
 ま,復活なんてことはあるまいが,もしそうなったらどれを使うかなと考えながら商品を見ていった。相手に届くものだから,ダイソーで売っているのはさすがにちょっとね。
 しかし,ここにあるのはいずれも良すぎる。お値段もけっこうする。うぅぅむ,これらはハレの機会に使うもののように思う。普段にはないような特別な連絡やお礼を書くのに,1枚か2枚を使う。
 彼とぼくの手紙のやり取りは,ケの領域に属するものだった。けっこうな便箋を消費した。だとすると,ダイソー便箋でいいかもしれないな。

画像はネットから拝借
● 3階は高級筆記具。ファーバーカステルの「パーフェクトペンシル 伯爵コレクション」の実物を初めて見た。ガラス越しに。
 4万円の鉛筆ね。正確には「消しゴム付きの鉛筆と鉛筆削りを内蔵したキャップがセットになったもの」で,書く,消す,削るが全部できるから「パーフェクト」ペンシルだという。何だか小馬鹿にされたような気分にさせる。
 文具雑誌などで写真は何度も見ていたけれども,なるほどこれが実物か。写真とそっくりじゃないか。

● もちろん,買わない。ってか,買えるはずがない。第一,鉛筆は使わなくなった。これからも使うことはないと断言はできないが,しかし,おそらくないだろう。
 第二に,600円のKIDSパーフェクトペンシルでパーフェクトな機能を満たすことができる。文具に求めるのは十全な機能のみであって,それ以外はどうでもよい。装飾性とか,ステイタスシンボルとしての象徴性とか,そういうのは徹頭徹尾どうでもいい。

● 持ち物で自分に付加価値を付けようとするのは,あるいは持ち物で自分に付加価値が付くと思ってしまうのは,恥ずかしいことではないか。その方向にだけは行ってはいけないのじゃないか。
 うん,そう決めてしまおう。そうしよう。お金がないから買えないんじゃないってね。考え方の問題なんだよって。

● 伊東屋では「伊東屋」の他に,小型店舗の「itoya topdrawer」,高級筆記具を取り扱う「カランダッシュ」の屋号でも店舗を展開している。ウィキペディア情報で知った。
 「カランダッシュ」は6月に外側から見かけた。自分が入ってはいけないところだと思って通り過ぎた。でも,言われてみれば伊東屋っぽかった気がする。

● 本店改装に伴って,高級感とゆったり感が格段に増した分,取り扱いアイテムが減った。以前の方がよかったと思うお方は,別館のK.Itoya(本館=G.Itoya の裏手)に行くべし。
 っていうか,いきなり別館に向かう通がけっこう多いのではないかと愚察する。文具は文具をして語らしめよ,故意の演出は不要である,と考える人が。

2020.07.25 誠品生活日本橋でノートを買う

● 台湾にはまだ行ったことがない。ひとつだけ言い訳をさせてもらうと,台湾便にはなかなかマイルの割当が出ないのだ。
 わが家では奥さんがJALカードでせっせと買物をして,マイルを溜めているんだけども,台湾便にはそのマイルが使えるチケットが出ない。それだけ人気があるということでしょう。

● 日本国内で台湾に接することのできるスポットがないわけではない。たとえば,小籠包の「京鼎樓」が恵比寿にある。が,正直に申しあげると,お台場をはじめ店舗が増えてみると,どうも味が面白くない結果になっているように感じる。
 食は風土のものでもあって,台湾のものは台湾で食べてみないと始まらない。そういうところがあるんでしょうねぇ。

● 食以外では,誠品書店が日本に進出していることは知っていた。
 ウィキペディアによれば,台湾の大型書店チェーンであって,書店を中心としたショッピングセンターも展開しており,店舗によっては24時間営業を行なっている,とある。何だか,モーレツ企業のようにも思われる。

● ともあれ,その誠品がコレド室町テラスの2階に店を構えている。2019年9月27日のオープンらしい。今日,初めて,行く機会を得た。
 日本橋でも主力商品は書籍。洋書もあるが,普通に日本の本を商っている。かなりの充実ぶりだ。

● まず,売場面積が広い。もちろん,神保町の三省堂や大手町の丸善のようなわけにはいかないのだが,ゆっくり見ていれば2時間は過ごせそうだ。
 並べ方も独特。分類というか括り方が,普通の日本の書店とは微妙に違うような。文学の隣に自己啓発本とか,そうした分野の隣合わせ方(?)にも特徴があるかも。

● 書棚の配置についていえば,まず圧迫感がない。高さを抑えているからだ。
 この点は国内のたいていの書店も同じなのだが,店によってはけっこうな高さの書架を備えて,それが独特の味わいになっているところもある。大手町の丸善がそうだと思う。いかにも日本を代表するビジネス街の書店という趣を作っている。
 日本橋の誠品は高さを抑えることによって,仰々しくないアカデミックな雰囲気を訴求しているようだ。

● 段差をうまく作っているとも感じた。お客の視野を遠くまで確保するためだろうか。
 この段差もまた,雰囲気を作るのに与っていると感じる。

● 雑誌の揃え方にも特徴がある。他の書店ではみかけない雑誌を見ることができる。特に,建築やデザインなどクリエイティブ系で。
 雑誌だけを見ると決めて来るのも,一案だろう。もっとも,そういうのは何度も来れる場合にしか成り立たない。しょっちゅうこの場所に来れる人が,そういう贅沢を味わえる。

 銀座の蔦屋書店と比べたくなるが,蔦屋書店ほどの偏りはない。正統派の書店の範疇にある。
 中国茶のカフェがあったり,普通のカフェもあったりするけれども,採算は取れているんだろうか。この場所でこの広さでは,テナント料も相当な額になるんだろうから。

● 文具や台湾雑貨も扱う。雑貨は台湾色が濃い。台湾フリークにははずせないスポットになっているだろう。
 文具の多くは他の文具店でも扱っているものだ。たとえば,トラベラーズノートであり,モレスキンであり,ロイヒトトゥルムであり,LIFEである。意匠は日本にないものがあるけど。

● が,日本にはないものもある。万年筆やインクなどだ。その中からノートを1冊,購入した。「讀書寫字」というのが製品名だろうか。
 ハードカバー(ゴムバンドはなし)でモレスキンよりやや大きい。っていうか,正規のA6サイズですかね。ぼくが買ったのはB罫だけれども,無地もあった。おそらく方眼もあるのだろう。中紙は104枚。けっこう厚めの紙。4点糸綴じ。台湾で製造しており,価格は1,348円(税込)。

● ノートの在庫はたくさん抱えているので,使うのはいつになるかわからないけれども,その日を楽しみに待つことにする。