2025年8月18日月曜日

2025.08.17 三鷹の山田文具店

● 三鷹の中央通りを市役所方面にだいぶ歩いて,人通りが少なくなった頃に,ひょっこり現れた文具店。入ってみると,ありていに申さば昭和の趣を湛えた,狭い売場の小さな店だ。
 写真の看板はそぐわない。ひょっとすると,このビルのオーナーなのかもしれないね。

● 入ったら何も買わずに出るのは難しいのじゃないかと思って,警戒しつつ,でも入ってみた。
 女性2人で店番をしている。そのせいか,空気がとろけるように柔らかい。何も買わないで出ても平気な感じも醸している。

● 品揃えは学用品が中心。万年筆を求めに来るところではない。
 のだが,その学用品がかなりユニークで,他では見かけないものが多い。学用品に特化した ANGERS 的な印象も受けた。

● 北星の「鉛筆屋のシャープペン」と「ペンシルガード」があった。ペンシルガードのデモには uni を使用。
 「大人の鉛筆」以外の北星製品をリアル店舗で見るのは,川崎LoFt でゼロウェイトを見て以来,たぶん2度目(ダイソーを除く)。

● ペンシルガードを含めて,いくつか購入。補助軸とサック。全部,鉛筆関連になった。サックは大きめなもので,補助軸に挿したままの鉛筆に使えそうだ。
 買わなかったけれども,定規にも面白そうなのがあった。

● こういう店があると,三鷹がグッと自分に近づいたような気がする。
 唯一,申し上げることがあるとすれば,STAEDTLER の tradition がHBとBしかなかったことだ。4Bか3Bがあれば買ったと思う。

● ドイツ製と国産では同じHBであってもかなり異なるものであることを,来店する若者たちに教えてやって欲しい。
 国産と同じと考えられて,日本の文具店に並べられるのは,STAEDTLER の鉛筆にとっても不幸なことのはずだ。

● この狭さでこれだけのユニークさを出せるのは驚きだ。他店が扱っているもの(≒売れ筋)を捨ててこそ,成り立つものだからだ。店主の好みと哲学(?)を貫徹させているように思える。
 他方で,こうしたユニークさを支える場が,三鷹のこの界隈にはあるということだろうか。文具店は文具店のみで完結できるものではないだろう。ユニークさを支えてくれるお客がいてくれないと。

● しかし,こうも思う。この面積で商売をしても,さほどに儲かるわけではあるまい。賃貸料とか他の収入があるに違いない。であればこそ,ここまで趣味的な店作りができる。
 もし,これを生業としてやらなければならないとしたら,ここまでの冒険ができたかどうか。この冒険は成功しているように見えるのだが,生業だったら冒険を躊躇して,結果,他の市中店と同様に,今頃は存在していなかったのではないか。

● いや,生き残りを賭けざるを得なくなって,この状況に辿り着いたのだろうか。試行錯誤と失敗を繰り返して。
 そうかもしれないな。あまり人には言いたくない苦労を重ねて,現在の穏やかさに到達したのかもね。

● 小さな酒場と同じで,酒や料理の味以外に,ママや大将の魅力に惹かれて通うというのが,文具店でも成立するのかもしれない。
 あの空気感は店主の人間性が作っているもののように思える。

● 文具店なのだから価格競争はない。どこで買っても値段は同じ。守られている業界だ。他業種からすればヌルいと映るかもしれない。
 が,それを活かして,品揃えの妙で勝負する他に,この店のように独特の空気感を作ることで,自分の魅力を発揮することもできるのだ。
 大きくなることを目指すのでなければ,この路線はありだ。ありだけれども,この空気感を作るのは言うほど簡単ではない。

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